局所性ジストニアが分かったあんざいのりえさんはリスクあっても手術を選択

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あんざいのりえさん(大道アコーディオン芸人/48歳)=局所性ジストニア

 頭蓋骨に小さな穴を開けて脳の深い部分に電極を差し込み、問題のある神経を焼く「定位脳手術」を受けたのは2014年のことでした。30分ぐらいの手術で、問題の指は快調に動くようになりました。でも喜怒哀楽の感情が感じられなくなって、わかりませんけど「これはリスクだったのかな」と思っています。

 11年ごろから右手のミスタッチが増えて、指が動きにくい感覚を持ち始めました。練習不足だと思ってさらに練習をするうちに、弾こうとすると、右手の人さし指がピンと立つようになったのです。ばね指かと思って整形外科に行くと「違う」と言われるし、練習すればするほど指の状態は悪くなる一方でした。

「フォーカル(局所性)ジストニア」という病名を見つけたのはネット検索中でした。さらに調べると、これを治す手術ができる先生は当時たった1人しかいませんでした。

 某大学病院の脳神経外科にいるその先生に手術をお願いしようと決めました。でも段階を踏まないといけないと思って、まずは大きめの病院の整形外科を受診しました。そこから目指す先生のいる某大学病院の脳神経内科を紹介してもらい、「局所性ジストニア」と診断してもらって投薬治療を3カ月ぐらい受けた後、ついに脳神経外科の先生にたどり着きました。どうしても、手術をしてほしかったのです。

 私は音大も出ていないし、音楽は不得意で、でも会社員にはなれないと自覚していました。じつは10代からずっと生きづらさを感じて過ごしていたのです。自傷行為もしましたし、カウンセリングやメンタルクリニックに15年以上通って、手術の直前まで精神安定剤が欠かせませんでした。

 就職は無理だと思ってたどり着いたのが大道芸です。そこからアコーディオンを習い、タップダンスやバランス芸のローラーボーラーの練習をして、その組み合わせで人前に立てるようになりました。必死でした。今さらほかの道は考えられなかったのです。

 手術の誓約書には、歩けなくなるリスク、再発するリスクなど、たくさんのリスクが書いてありました。でも決意は変わりませんでした。手術は1カ月後に決まりました。病名がわかってから1年間、お客さんはもちろん、大道芸人仲間にも言えませんでした。病状がどうなるのかわからなかったので、怖くて必死に隠していました。とても苦しかった。手術が決まって初めて、病気のことを告白できました。

 局所性ジストニアは、特定の動きを繰り返すうち、それをしようとすると無意識に筋肉が収縮してしまう脳神経の病気です。手術では、頭蓋骨に穴を開けられる間も電極を差し込まれている間もずっとおしゃべりできる状態です。脳や頭蓋骨には痛みの神経がないから麻酔は頭皮だけなんです。しかも、手術台の上でアコーディオンを演奏しながら神経を探すのですから面白いですよね。

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