週末に読みたいこの1冊
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「昭和40年男 ~オリンポスの家族~」佐川光晴著
山田三男は体操の元日本代表選手。ソウル五輪での金メダルを目指していたが前年の世界選手権で大技に挑戦して失敗。大ケガを負って選手生命を絶たれる。そんな三男を支えたのが、走り幅跳びの日本記録を持つ同じア…
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「経済学はどのように世界を歪めたのか 経済ポピュリズムの時代」森田長太郎著
アダム・スミスの「国富論」刊行を起源として経済学が始まり、以来約240年の間に新しい学説が次々と生み出されてきた。しかし大学で経済学を学んだ著者は、この学問に対して何か論理を歪曲しているという直感的…
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「名馬を読む2」江面弘也著
前著「名馬を読む」はJRA顕彰馬32頭の生い立ちやそれを支えた人たちの知られざるエピソードを描いたものだが、ファンの記憶に残っている名馬はその32頭に限らない。本書は前著では取り上げなかった個性的な…
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「スワロウテイルの消失点」川瀬七緒著
物語は、杉並区下井草で発見された腐乱死体の司法解剖シーンから始まる。解剖医が遺体にメスを入れる現場に立ち会ったのは、法医昆虫学者の赤堀涼子、警視庁の岩楯刑事とその相棒の深水巡査部長、高井戸署署長、鑑…
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「図書館司書と不死の猫」リン・トラス著、玉木亨訳
ケンブリッジの図書館を定年退職したばかりのアレック・チャールズワースが、休暇先のコテージで、奇妙なメールを読み始めたところから物語は始まる。ウィンタートン博士と名乗るメールの送り主についての記憶は定…
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「わたしは哺乳類です」リアム・ドリュー著、梅田智世訳
ふだんヒトは、自分が哺乳類の一員であることを忘れているが、実はその営みは哺乳類のスタイルに根差している。本書は、哺乳類の脳の研究などに長年携わってきたサイエンスライターの著者が、最新の知見を紹介しな…
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「蒼色の大地」薬丸岳著
舞台は、明治時代の瀬戸内地域。両親を亡くし、15歳から2人で生きてきた榎木新太郎とその妹の鈴は、新太郎が軍人からの支援を受けて海軍兵学校に入り、妹を無理やり高等女学校に入れたことから仲たがいしてしま…
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「酔芙蓉」篠綾子著
長承3(1134)年、初秋。11歳の藤原忠雅は、末茂流の藤原家成の中御門邸を訪れた。父・花山院忠宗が亡くなり家成の元に婿入りすることになったのだ。末茂流は中流貴族で摂関家傍流の花山院よりかなり格下。…
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「風狂ヴァイオリン」小川征也著
津村澄人は49歳。大手製薬会社の大阪支店長を務め、社長から内々に来年の役員昇進を約束されている。人もうらやむ順風満帆の人生。だが、澄人は若い頃から、50歳までサラリーマンをやるが、以降は風来坊になる…
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「同潤会代官山 アパートメント」三上延著
1927年、結婚して初めて住むことになったアパートの一室で、竹井八重が夫の浴衣を縫いながら物思いにふけっているところから物語は始まる。そもそも八重は10代で一度結婚していたものの夫の悪所通いに耐えら…
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「『盛り』の誕生」久保友香著
「日本人の美意識を解明したい」と考えた研究者が、女の子の間で流行する「盛り」と呼ばれる現象に着目。プリクラ、つけまつげ、インスタグラムなど、さまざまなテクノロジーを駆使して、現実とは違うビジュアルを盛…
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「鬼憑き十兵衛」大塚已愛著
寛永12年10月。細川忠利の剣術指南役である松山主水は、光円寺で療養中のところを元加藤家家臣の浪人たちによって暗殺された。 彼らは「秘密裏に殺せ」というある者の命を受け、主水のみならず寺にい…
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「ブックショップ」ペネロピ・フィッツジェラルド著、山本やよい訳
物語の舞台は、1959年のイギリス。主人公のフローレンス・グリーンは、戦争で亡くなった夫との夢だった書店をオープンするため、海辺の小さな町ハードバラの空き家を手に入れた。 オールドハウスと呼…
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「人喰い――ロックフェラー失踪事件」カール・ホフマン著、古屋美登里訳
1961年11月、ニューギニア島とオーストラリア北岸の間に位置するアラフラ海で、ニューギニアの少数民族、アスマット族のプリミティブアートを収集していたマイケル・ロックフェラーが行方不明になった。 …
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「キッド」相場英雄著
主人公は、香港で中古フィルムカメラの専門店を営む城戸護。カメラ屋の店主はあくまで表の顔で、実はかつて自衛隊の特殊部隊にいた経験を生かしてリスク管理のコンサルタントをしていた。 そんな城戸のも…
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「サバティカル」中村航著
大学卒業後、エンジニアとしてひたすら働き続けた梶は33歳になって、現在の職場を辞め、新たな職に就くことにした。その移行期間でぽっかりと5カ月間の空白ができた。思いもかけぬサバティカル(長期休暇)だ。…
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「ビッグ・クエスチョン」スティーヴン・ホーキング著、青木薫訳
昨年3月に亡くなったホーキングはブラックホールの研究で知られている。先日、世界初のブラックホールの撮影に成功したと報じられたが、もし彼がこれを見ることができたら、さぞ喜んだことだろう。 本書…
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「夏の坂道」村木嵐著
大日本帝国憲法公布の年に香川県で生まれた南原繁は、18歳のとき上京し、日本中の秀才が集まるといわれる一高に進学した。しかし、新渡戸稲造や内村鑑三といった尊敬する師に恵まれ、学問とキリスト教に目を開か…
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「東京パパ友 ラブストーリー」樋口毅宏著
有馬豪は30歳の若さでファンドマネジメント会社のCEO。スタイルが良く家事を完璧にこなす妻と可愛い娘に豪壮なマンション。絵に描いたようなエスタブリッシュメントだ。 一方の鐘山明人は52歳で、…
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「あちらにいる鬼」井上荒野著
流行作家の長内みはるは、ある講演会で気鋭の戦後派作家・白木篤郎と出会う。みはるは、初対面からなれなれしい白木をうっとうしく思いながらも、小説家としての白木と、ひとりの男としての白木の両方に魅了されて…