文庫で読む 食べ物をめぐる物語
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「ききがたり ときをためる暮らし」つばた英子・つばたしゅういち著
当たり前ではあるけれども、食べることは、あくまでも暮らしの中の一部で、そこから切り離されてあるものではない。とはいえ、コンビニや冷凍食品といった手軽な食が周囲にあふれている現在、そうしたことが見えに…
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「村上龍料理小説集」村上龍著
ルイス・ブニュエルの映画「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」は、裕福な男女6人が繰り広げるシュールな物語で、そこでは食べる行為とエロティシズムとの密接なる関係が見事に活写されている。それは、「味わう」「…
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「もっと塩味を!」林真理子著
現在、東京の飲食店でミシュランの星が付いているのは230軒。本場パリの118軒を上回り世界一だそうだ。最近でこそ、ミシュランの星が付いているといってもさほど珍しくはないが、40年ほど前には、日本人が…
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「焼肉ドラゴン」鄭義信著
ホルモン焼きの「ホルモン」が、もともと食べずに捨てていた豚や牛の内臓、つまり「捨てるもの」を意味する大阪弁の「放るもん」を語源とするというのは、どうやら俗説らしい。 しかし、敗戦直後の食糧難…
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「僕らのごはんは明日で待ってる」瀬尾まいこ著
入院食というのはたいがい塩分控えめで味気ないもの。そこで活躍するのがふりかけ。本書にも、長く入院している人に何種類ものふりかけを差し入れる場面が出てくる。贈られた人がいう。「これだけ種類があるってこ…
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「ファミレス」(上・下) 重松清著
「ファミレス」という言葉が生まれたのは1970年。以後、外食産業の雄として発展してきたファミレスだが、以前に比べ利用率が減少し、客層も、本書の主人公が「ファミレス」は本当は「ファミリーレス」、家族なし…
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「クリスマス・プディングの冒険」アガサ・クリスティー著、橋本福夫・他訳
晩年のアガサ・クリスティーは毎年クリスマスに合わせて新刊を出した。クリスティー・ファンは年末にクリスティーの新刊を読むのが恒例行事になっていた。本書はクリスティー自らが料理長となって、とっておきのク…
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「毒入りチョコレート事件」アントニイ・バークリー著、高橋泰邦訳
ロアルド・ダールには「おとなしい凶器」と「味」という食べ物を扱った傑作ミステリー短編があるが、これはどちらかといえば変化球。ミステリーと食べ物といえば、やはり毒殺が王道だろう。なかでもこのバークリー…
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「料理長が多すぎる」レックス・スタウト著、平井イサク訳
ネロ・ウルフといえば、美食と蘭をこよなく愛する名探偵として知られる。なにせ、お抱えの料理人を雇い、屋上の栽培室には1万株もの蘭があるという凝りよう。美食家を体現するように、体重も140キロ超の巨漢。…
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「料理人」ハリー・クレッシング著 一ノ瀬直二訳
「男をつかむなら胃袋をつかめ」とは、女性が男を落とすときにうまい料理が強い武器になるという意味でよく使われるが、男女に限らず、胃袋をグッとつかまれると、つい寛容になるのは世の常。本書に登場するのは、胃…
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「〈完本〉初ものがたり」宮部みゆき著
「初物七十五日」。食べると75日寿命が延びるといわれる江戸っ子の好きな初物。4大初物といえば、鰹、鮭、茄子、松茸。初物は高値で取引され、歌舞伎の3世中村歌右衛門などは鰹1本に3両(20万~30万円)も…
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「いつかの花」中島久枝著
江戸時代の初期、酒、反物、菓子などは、京都や大阪の上方から取り寄せたものを「下り物」として珍重し、逆につまらないものは「下らない」ものと蔑んだ。幕府に出入りする菓子屋も当初は京菓子屋と決まっていたが…
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「しぐれ茶漬」柏田道夫著
江戸時代の料理本のベストセラーに「豆腐百珍」がある。その名の通り、100種類に及ぶ豆腐料理の調理法が記されていて、その中に「雪消飯」という、なんとも風流な名前の豆腐料理がある。 炊いたご飯を…
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「八朔の雪」高田郁著
関西から初めて東京に来た人が、驚き敬遠するのがそばやうどんの汁のどす黒い色だというのはよく聞く話。これだけ情報が均一化している現代でも味に関しては案外に保守的なようだ。まして江戸時代には西と東の味の…
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「甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺」田牧大和著
安土桃山時代、茶の湯の流行に伴い砂糖を使った茶菓子も登場したが、当時は高価で中国産の黒砂糖が主だったようだ。江戸に入り、8代将軍吉宗がサトウキビ栽培を奨励したことにより砂糖の国産化が始まる。中でも香…
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「卵のふわふわ」宇江佐真理著
江戸時代、卵は高価で貴重なものだったが、後期になると卵をとるために鶏が飼育されはじめ、庶民の口にも入るようになり、卵のさまざまな料理法を記した「卵百珍」がベストセラーになったりもした。「秘伝 黄身返…
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「禁断のパンダ(上・下)」拓未司著
「味の求道者」といって思い浮かぶのは、漫画「美味しんぼ」の海原雄山だろう。雄山の美食への飽くなき追求と、そのためには妻子をも犠牲にする強烈な我欲が作品の主旋律となっている。 本書に登場する料理…
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「メイン・ディッシュ」北森鴻著
優れた料理人には鋭敏な味覚と同時に多様な食材の特性を引き出しながらTPOに合わせた料理を作り上げていく豊かな想像力が必要だ。名探偵もまたインスピレーションを頼りに細かな断片をつなぎ合わせて事件の構図…
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「ラストレシピ」田中経一著
優れた音楽家には絶対音感の持ち主が多いという。ならば、「絶対味感」「絶対舌感」といったものもあるのだろうか。もしあるとしたら料理人にとっては格好の武器になるにちがいない。本書の主人公は、一度味わった…
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「菜の花食堂のささやかな事件簿」碧野圭著
料理教室へ通う動機としては、料理の基礎を学ぶため、レパートリーを増やすため、カリスマ講師がいるため、社交の場として、等々が挙げられる。 東京・武蔵野の一角にある「菜の花食堂」の料理教室はその…