保阪正康 日本史縦横無尽
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テロリストであることを恥じて25歳で処刑された古田大次郎
ギロチン社のアナキストたちは、どのような心境で自らの思想をつくり上げたのか、あるいはどんな主義のためにテロルを行おうとしたのだろうか。むろん、その背景にはこの時代の軍人や兵士が、大震災を口実に平気で…
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大杉栄を信奉するアナキストたちは戒厳司令官に発砲した
大杉栄の虐殺をはじめ、社会主義者、中国人、朝鮮人を虐殺した事件は、国際社会に日本人と日本社会の性格を印象づけることになった。新聞の特派員の報道は「日本人は感情の高まりやすい民族」という点で共通してい…
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社会主義者や朝鮮人を殺せば「出世する」と教えられた
歴史家のねずまさし氏の記述によると、畑俊六元帥の日記の内容は畑から直接話を聞いた日本新聞記者・大石基隆の口から、戦後になってその周辺の人々や無産運動の活動家などに、こっそりと伝えられたというのであっ…
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ひざまずいて命乞いする大杉栄ら3人を一斉射撃で銃殺した
軍法会議では甘粕正彦が大杉栄と伊藤野枝、それに橘宗一の3人を自分が殺害したと主張したが、甘粕の部下の1人は宗一少年を殺害したのは私であると証言した。しかし、こうした蛮行が軍の敷地内で、半ば公然と行わ…
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誰が殺したのか一? 軍内部で行われた大杉栄殺害事件の謎
大杉栄が虐殺されたのは現在に至るも真相は不明である。大杉夫人の伊藤野枝、そしてたまたま連れて歩いていた甥の橘宗一も殺され、井戸に投げ込まれていた。当初この事件は、軍内部で組織的に行われたために、闇に…
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関東大震災で軍人に殺された共産主義者とアナキストたち
関東大震災は社会心理の上では、形あるものは必ず壊れるといった虚無感を生んだ。私のみるところ、共産主義運動やアナキズムの広がりは、この虚無感や絶望感を土台にしているようだ。特にアナキズム運動を調べてい…
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関東大震災 作家は「虚無感は間違いではない」と分析した
共産主義運動の高まりや、大正デモクラシーの社会への定着、加えて中産階級の登場など、日本社会の変化は摂政宮の時代の特徴であった。こうした人為的な変化とは別に、自然災害による人心の変化もまた生まれた。大…
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共産主義と無政府主義の対立を利用 特高警察の泳がせ捜査
日本共産党は全くの秘密組織であった。今ではその創立の経緯が明らかになっているが、当時は一般には全く知られていなかった。とはいえ知識人の間では少しずつ知られるようになり、共産党は社会主義運動の成果であ…
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中産階級が生まれ、民主化運動が活発化。共産党が誕生した
大正末期の非軍事的動きとそれに呼応する日本社会の変化は、大きくいえば第1次世界大戦後の国際情勢の移り変わりに影響されていた。加えてこの摂政宮の時代と前後して指導者の交代期に入っていた。大正10(19…
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青年将校が証言 軍人が陥った「大善」と「小善」の論理
大正時代末期の軍人の「冬の時代」。その反動が昭和初期にどのように表れたか、そのことを語っておきたい。 昭和初年代の青年将校による国家改造運動は、大体が20代後半から30代前半の世代による天皇…
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大正デモクラシー 軍人が国民の嫌悪感を浴びた“冬の時代”
この時期は軍事の評判が極めて悪かった。大正デモクラシーの広がりによる人道主義的な考えが、社会に定着しつつあった。加えて1920年代の国際協調時代でもあった。第1次世界大戦の悲惨な体験が人類の歴史に深…
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牧野、西園寺らは摂政宮を育て「君民一体の国家」目指した
一口に「摂政宮」と言っても、その位置には多様な考え方があった。ひとつは摂政宮の座についた人はすべからく、大正天皇に与えられている全ての権限をそのまま行使するといった考え方だ。大正天皇の代行である。 …
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大正末期の5年間に日本軍が他国に攻め入らなかった不思議
近代日本史を繙いていて、ああこの5年間はそれまでの日本社会と異なるなと呟きたくなる年代がある。大正10(1921)年11月から15(1926)年12月25日までである。年譜を見るとわかるが、軍事上の…
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日本人が全員、大阪出身者になれば戦争は起こらない?
これは大本営の作戦参謀から直接聞いた話だが、明治の日清戦争から昭和の太平洋戦争の終わりまで、大阪の連隊を戦闘の初めに最前線に送ったことはないそうだ。当然ながら私は「なぜ」と聞いた。彼はこう答えた。 …
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戦争は命に序列をつける 特攻隊員に軍人が少なかった理由
戦争は人の命に序列をつけることである。軍人が最高位に位置し、兵力に換算されない者は死んでもいい存在となる。この序列は昭和陸軍の基本的な体質であった。当然ながら戦略や戦術にもそれが反映されている。今回…
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特攻隊員を人間ではなく特攻機器と見ていた高級軍人
私はこれまで数多くの軍人に会ってきて、この人は人間として失格だなと思った人物が3人いる。いずれも陸大出身の高級軍人である。 その一人がCである。彼は航空畑の参謀であったが、徹底的な特攻作戦の…
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兵士になるのを拒否 死を選んだことにして徴兵を逃れた男
私の取材メモから抜き出した戦時下のエピソードの第3話である。戦後あまり語られていない話として、兵士になるのを拒否したケースがあることを、私たちは知っておく必要がある。戦時下では戦場で死にたくない、銃…
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ニューギニアで殺害した学徒兵の手紙に涙した若き日本兵
私の取材秘話の第2話。Tという学徒兵の話である。彼はニューギニア戦線に送られ、前線に立つことになった。ある時、20人ほどの仲間と斥候に出された。ジャングルを抜けると小高い丘があり、その頂上にある見張…
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精神を病み、部下を「スパイだ」と軍刀で斬りつけた大隊長
私はこれまでに昭和陸軍の将兵、軍属など、延べ2000人余に会い、戦史に書かれていない史実や伏せられているスキャンダルなど数多くの事実を聞かされた。むろん、書かないという約束の上でである。軍事はきれい…
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記者を激戦地に 東條英機は戦場を私的な処刑の場に使った
アメリカを中心とする連合国は、日本の軍閥がいかに国民を欺いていたかを伝えることを目的にしていたが、ほぼ1年余で放送を中止している。 調査を十分に行う余裕がないということもあるだろうが、東京裁…