シネマの本棚
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上官の覚えめでたい新兵に罠を仕掛け破滅に
軍隊はいうまでもなく武力集団だが、それ以上に儀礼的な集団でもある。 厳密な階級制と命令系統。延々と繰り返される「気をつけ」と「休め」。考えるより先に動く体。礼装となれば兵卒でさえ胸に軍歴章を…
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パリ郊外の移民団地をめぐる行政と住民の闘い
四半世紀近く前、スウェーデンで移民排斥の調査をしたことがある。ある自治体が移民排斥の条例を決議したのを政府が強引に止めに入ったのだ。表面的な観光イメージとは裏腹に重工業が盛んなスウェーデンは、早くか…
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数々の映画が「男目線」であることを明らかに
ちかごろ耳にすることの多い新語に「構造的差別」というのがある。「構造的人種差別」は慣習化された社会制度の中で一筋縄では解決できなくなっている人種差別のこと。同じように「構造的性差別」もある。これを娯…
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記者らが伝えるニュースの裏側にある生きた現実
戦争特派員というけれど、その多くはストリンガーと呼ばれる契約の取材記者だ。危険な前線取材の大半は、そういう人々が現場を担っている。 彼らの取材はごく一部のみがニュースに使われる。映像も断片の…
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推しの実刑に心壊された同志女子たちの声を求めて
オタクという言葉が出てきたのは40年も昔だが、当初の陰気な影は既にない。いまでは多数の亜種も登場、そのひとつが「推し活」だ。この奇妙な関係をめぐる韓国のドキュメンタリーが現在公開中の「成功したオタク…
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美術館からサックラー展示室を排除する戦術は…
てっきりアーティストの仕事や人間を描く芸術ドキュメンタリーだと思っていたら全然違った、というのが今回の映画。今週末封切りの「美と殺戮のすべて」である。 取材対象はアメリカの写真家ナン・ゴール…
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夢幻的な砂漠の映像を心理描写に生かした続編
シリーズものの映画には2種類がある。ひとつは、主役などは同じだが毎回の筋は独立した「1話完結型」。代表が007だ。もうひとつは連続したストーリーでキャラクターの運命が変転する「大河小説型」。こちらは…
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リトル・リチャードの先駆的人生を描いたドキュメンタリー
ロックンロールの創始者とされる3人の中で演奏がいちばん巧みなのはファッツ・ドミノだが、ステージパフォーマーとしては群を抜いてリトル・リチャードだろう。 今週末封切りの「リトル・リチャード:ア…
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スペインの巨匠、ビクトル・エリセの31年ぶりの新作
映画は20世紀で終わったという説がある。映画用フィルムの登場が19世紀末。それから1世紀後にデジタル化でフィルムが淘汰され、いまでは大半の映画館がDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)に置き換わって…
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ベルギー出身監督の最新2作が同時公開
夜になると都会では大きな人工音が絶える。すると静寂に遠い地鳴りのような人工音が混じり合って、都会のほかにはない、神経の研ぎ澄まされた独特の空間になる。 ふだんは意識しないそんな〈夜の神経〉を…
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社会事情を反映し風刺を効かせて描くコメディー
コメディーは国境を超えない。笑いは万国共通というけれど、それはお子さまレベルの話。大人の笑いは風刺も皮肉も社会事情と切り離せない。 今週末封切りの「僕らの世界が交わるまで」はその実例だろう。…
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ヒジャブ姿の女性通信士に戦争のリアルを見る
正規軍同士が正面からぶつかり合うウクライナの戦争に目を奪われる昨今だが、むろん対テロ戦争も終わってはいない。特に中東のイエメンではサウジが支援する政府軍とイランが支える反政府勢力フーシ派の内戦が長期…
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アウシュビッツで「死の天使」に仕えた91歳の証言
インタビューに答える人物の上半身を固定カメラで撮り続ける。ニュース映像などでよく見るショットだが、ドキュメンタリーの分野では「おしゃべり頭(トーキングヘッド)インタビュー」などと呼ばれ、退屈な映像の…
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不安を抱えた人物ナポレオンを描いた“評伝”映画
歴史上の人物を生涯のまま描くのが「伝記」、特定の横顔に焦点を当てたり、なんらかの評価を加えて人物像を描くのを「評伝」という。 そのひそみにならえばこれは“評伝映画”だろうか。今週末に封切り予…
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絶妙な配色で描き出すこれからの時間と過去の時間
当たり前の話だが、映画は見た目が肝心。特に色づかいはセンスの良し悪しがはっきり出る。ところが日本の映画はこれが苦手で、映像の色彩設計には目を覆いたくなるものも少なくない。 それが最近、うれし…
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恋人たちの証言を重ねて描く世界的人気作家の素顔
「今度の本を書くのは楽しい」とその作家は秘密の日記に書いたという。「文章の一つ一つが、まるでクギをトントン打ち込むように紙に刻まれていく。爽快な気分だ」 今週末封切りのドキュメンタリー映画「パ…
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外国人労働者を雇ったことから地元住民と対立し…
20世紀は「戦争の世紀」、21世紀は「テロの世紀」といわれたものだが、近ごろはむしろ「ポピュリズムの世紀」じゃないかと思うことが多い。 現にトランプ支持者を見ても「大衆扇動」より「大衆の専制…
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ロックが商業化される前の貴重な記録
1960年代は何かにつけて神格化されがちな時代だ。60年の米大統領選で勝利したケネディはわずか3年後に暗殺され、翌々年にはベトナムで地上戦開始。68年には学生運動が世界中で火を噴く。確かに伝説の要素…
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ゴダール、ヒチコックの監督ドキュメンタリー
このところなぜか映画監督についてのドキュメンタリーがめだつ。少し前は早々と引退宣言した人気者の「クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男」があった。そして今週と来週末は2週つづけて「ジャン=リ…
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ドライビングゲームにハマった英国青年がル・マン参戦
いまどきはやらないものの筆頭といえばモータースポーツだろう。バブル期の浅薄なF1人気はともかく、90年代のAT限定免許あたりからクルマ離れが始まり、不況風の中で自動車熱もしぼんだ。 ところが…