夢幻的な砂漠の映像を心理描写に生かした続編

公開日: 更新日:

「デューン 砂の惑星 PART2」

 シリーズものの映画には2種類がある。ひとつは、主役などは同じだが毎回の筋は独立した「1話完結型」。代表が007だ。もうひとつは連続したストーリーでキャラクターの運命が変転する「大河小説型」。こちらはスター・ウォーズが典型だろう。

 今週末公開の「デューン/砂の惑星PART2」は後者の最新作である。

 原作はF・ハーバートの「砂の惑星」シリーズ。初のエコロジーSFとされる思弁的な小説で映画化は不可能とされた。40年前にD・リンチ監督による映画化作品も中途半端な失敗作だ。

 今回はカナダ人のドゥニ・ビルヌーブ監督が3年前にリメークした「DUNEデューン/砂の惑星」の続編だが、これが“つなぎ”の映画としてなかなかいい。実は筆者は複雑な設定の説明でもたついた第1作に失望して今回の「PART2」も期待してなかったのだ。ところが説明の手間がなくなった今作ではアブダビやヨルダンでロケした夢幻的な砂漠の映像を心理描写に生かす余裕まで見せて、映画館での鑑賞にたえる出来になった。

 3時間に届く長尺でクローズアップが多い割に疲れないのも配信の時代らしい小技のおかげだろう。

 原作の重厚な政治劇や哲学的な問いに迫るような深みはないが、つなぎの映画は起承転結でいえば承と転の混ぜ具合が肝心。そんな娯楽作家の職人技という点で「ゴジラ-1.0」と案外似ているのである。

 映画の続編については押井守著「映画の正体 続編の法則」(立東舎 2200円)が無類に面白い。映画をだしに時事放談や裏話をつれづれに語るシリーズ企画の一冊だが、これが群をぬいて面白いのは著者自身がアニメと実写の監督で多数の続編や企画に関わったからだろう。プロデューサー視点の続編論など、あるようで意外にないのである。

<生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    北乃きいが「まるで別人!」と話題…フジ「ぽかぽか」でみせた貫禄たっぷりの“まん丸”変化

    北乃きいが「まるで別人!」と話題…フジ「ぽかぽか」でみせた貫禄たっぷりの“まん丸”変化

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

  4. 4
    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

  5. 5
    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

  1. 6
    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

  2. 7
    静岡県知事選で「4連敗」の目 自民党本部の推薦が“逆効果”、情勢調査で告示後に差が拡大の衝撃

    静岡県知事選で「4連敗」の目 自民党本部の推薦が“逆効果”、情勢調査で告示後に差が拡大の衝撃

  3. 8
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9
    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

  5. 10
    “絶対に断らない女”山田真貴子元報道官がフジテレビに天下りへ 総務官僚時代に高額接待で猛批判浴びる

    “絶対に断らない女”山田真貴子元報道官がフジテレビに天下りへ 総務官僚時代に高額接待で猛批判浴びる