W杯優勝カップは国王や大統領であっても触れてはいけない
純銀製で金箔に覆われたデザインはビクトリア調。左右の持ち手の上にはギリシャ神話のサテュロスとニンフの頭部が飾られている。サテュロスは酒神バッカス(ディオニュソス)につき従う半人半獣の精霊で「豊穣の化身」とされる。
ワインと女性をこよなく愛し、いつもぶどうとツタでできた花輪を頭に載せている。そんなわけでトロフィーにもぶどうとツタのレリーフが施されている。古代ギリシャの壺の模様絵としてたびたび登場するが、ニンフと戯れていたり、強調された男性のシンボルを握っていたりと、いわゆる「男的」なモチーフだ。
一方のニンフは下級女神で、歌と踊りを好む若くて美しい女性の姿をしている。神々や人間と交わっては英雄や半神を生んでいく。今の時代にトロフィーのデザインが発表されたなら、眉をひそめる人が多少出たかもしれない。英国流のジョークだったのでは、と個人的には捉えている。
てっぺんの「パイナップル」はコロンブスによってヨーロッパにもたらされたカリブの果実。当時は大変珍しく、高価なもので上流階級がこぞって彫刻や絵付け食器を収集したようだ。「富と歓待」の象徴とされていたらしい。セント・ポール大聖堂やウィンブルドンのトロフィーの上にも見つけることができるので確認してみて欲しい。