坂本紘司氏が語る“湘南らしさ”とは? 選手の「未来予想図」を共有してキャリアを一緒に作り上げたい
社長になって「会社の中でまだまだ知らないことがたくさんある」ことに気付きました。
たとえば強化部というのは、少し独立した部署なので事業系の部署がどんな仕事をしているか、詳細のところまで分かっていない部分もありました。
社長になって「会社をうまく回していくためには、どんなことをしなければならないのか」を注視するようになりました。
選手の時は、目の前の試合でどうすれば結果を残せるか--ということにフォーカスを当てていれば良かった。
それが社長になるとクラブ経営を良くしていくのは当然ですし、チームを強化して順位をひとつでも上げることに全精力を傾けることは、言うまでもないでしょう。
まずは、会社で「何が起こっているのか」を把握するところからスタートしました。社員、アカデミーのスタッフなど全員の仕事ぶりに細かく目を配り、仕事に対するモチベーションを上げていくことを心がけました。
社長になって「やらなければいけない」と強く思ったことは「会社を代表してクラブの将来ビジョンを明確に語れないといけない」ということがあります。
Jリーグは今、群雄割拠の時代を迎えています。 これからさらに格差が広がるであろうJリーグですが、今はまだ多くのクラブに優勝のチャンスがあります。さらに格差が広がり、太刀打ちできなくなってしまわないうちに「残留が目標」ではなく、何としても「優勝を争えるチーム」を作り上げたいと思います。
湘南は毎年、主力選手を強豪チームに狙われてしまいます。ステップアップとして移籍してしまう選手が、少なからずいるのは事実です。
本当に残念なことですし、苦しいことではありますが、選手と会話を持ちながら、選手の描く「未来予想図」を共有し、一緒に選手のキャリアを作り上げるクラブでもありたいと思います。
そしていつか、外に出ていった選手たちがさらに成長し、湘南に戻ってきて一緒に優勝を目指して戦ってくれることを心の底から願っています。(おわり)
▽1978年12月3日生まれ。滋賀県出身。静岡学園高からジュビロ磐田、湘南ベルマーレでプレー。2012年に引退。Jリーグ通算出場456試合.57得点。引退後は湘南のフロントスタッフを皮切りに営業本部の本部長、取締役、スポーツダイレクター、GMを経て2023年6月に社長に就任した。
(取材・構成=森雅史/サッカージャーナリスト)