シネマの本棚
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殺人事件を追ううちに都市計画の闇に…
原作小説の映画化で原作も映画もいいという例は少ない。でもまれにある成功例。先週から都内公開中の「マザーレス・ブルックリン」がそれだ。 同名原作は99年。舞台も同時代で、分裂症めいた現代ニュー…
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拳闘家の悩みや迷い、失いかけた情熱
昔はボクサーのことを日本語で「拳闘家」なんて言ったものである。いいですねえ。 腕自慢だがごく普通の若者が、勝ったり負けたり、笑ったり泣いたりしながら、ボクシングという孤独なスポーツを生きてい…
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画面いっぱいにあふれる新旧のベトナムの女性風俗
1990年代半ば、国交正常化後のベトナムを初めて旅して、20年後に再訪したとき、あまりの違いに言葉を失った。 かつては60年代の戦火の跡がまだうかがわれた国が、成長著しい東南アジアの都会に変…
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脱力系のテンポが秀逸なパレスチナのコメディー
いまや中国にドイツにと世界中のテレビ局が王朝物や陰謀物の大型ドラマで人気を競っているが、パレスチナも似た状況とは知らなかった。先週末封切られた「テルアビブ・オン・ファイア」はそんな意外性から始まる傑…
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間接表現で描くキューブリック伝記映画
亡くなった人物の生涯を描く手法に「本人自身より周囲の人間との関わりを描く」というのがある。いわば間接表現の伝記だが、いま、この映画版の面白いドキュメンタリーが同時公開されている。「キューブリックに愛…
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ハノイのおしゃれな民俗雑貨店内のような映像美
かつてベトナムブームのきっかけにもなった映画「青いパパイヤの香り」。製作当時はまだドイモイも道半ばで、戦禍の傷痕あらわなベトナムではロケもできず、撮影はフランスでセットを組んだという。しかしあれから…
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映画の余白にあふれ出す気迫と胆力
小説や映画には時代の空気を敏感に反映するだけでなく、社会のわだかまりや問いかけに応答し、道を示そうと試みるものがある。先週末封切りの「典座」をそんな一作というと、まるで教育映画みたいに響くだろうか。…
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若者はいらだたしさを生きるしかない存在
若さにはかけがえのない価値があると人はいう。が、その価値は可能性という名の「まだ実現されてない価値」。つまり若者は、若さの価値を自分自身では手にすることができないという意味で、いらだたしさを生きるし…
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共感疲労で殉職した英国女性記者の実話
ジャーナリズムの世界に「共感疲労」という言葉がある。紛争や災害の現場報道で心を痛めるあまり、犠牲者や被害者のトラウマを自分も引き受けて燃え尽きてしまうことだ。救命士なども同じ立場だが、欧米では特に報…
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切り紙細工のような独特な画風が魅力
今やアニメは世界中で人気だが、製作技法まで宮崎アニメやディズニー優位とは限らない。特に欧州は人形アニメをはじめ多様な技法が盛ん。先週末から公開中の「ディリリとパリの時間旅行」はその最新の一作である。…
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みじめな民衆の姿を尊厳と共に描く弾圧事件
映画を見る楽しみのひとつが「光」の美しさだ。ライティングが丁寧な映画は、昔の白黒映画でも目が洗われるような体験にあふれている。 先週末から公開中の「ピータールー」もまたそんな感動をもたらす新…
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70年代に米アングラ界を席巻したSMガイの一生
近頃は中国やインドの映画でさえ国際商品めいて、「におい」がしなくなった。と思っていたら、意外なところに伏兵がいた。北欧である。 たとえば実在の乱射テロ事件を描いた今年3月の「ウトヤ島、7月2…
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フェイクぎりぎりのスリリングな風刺劇
南米ウルグアイ。世界に知られた名産はサッカー選手のルイス・スアレスぐらい、というのはウルグアイ人得意の自虐ネタだが、実は世界で初めて大麻を完全合法化したのが同国。昨年10月に解禁したカナダは有名だが…
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冷戦下のポーランドで数奇な運命をたどる男と少女
ベルリンの壁の開放から今年で30年。しかしその前の40年間、ベルリンとドイツはふたつに分断され、冷戦の巨大な壁は世界に厳然とそびえていた。先週末から公開中の「COLD WAR あの歌、2つの心」はこ…
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絶海の孤島からの脱獄物語が44年ぶりにリメーク
スターになった時期が違い過ぎて意外な話に聞こえるのだが、クリント・イーストウッドとスティーブ・マックイーンは実は同い年。前者は60年代末までマカロニ西部劇のドサ回り(?)に甘んじたが、30歳そこそこ…
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社会の秩序への疑念に目覚めた子どもたち
キリスト教系の小学校に通う子どもたちは、小3ごろまで「イエス様」を素直に信じている。だが、もう少し経つと怪しくなり、やがて「イエス様っていないんだよ」と言い出す。それは社会の秩序というものが「あてが…
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一人一人の小さなエピソードがやがて夢幻譚へ
チンチン電車が好きだ。子ども時代は東京と福岡。その後も神奈川、広島、鹿児島、札幌、函館、熊本、高知……と現存する国内はほぼ乗ったし、外国は東アジアの香・台・中から、欧州なら英・蘭・伊・仏・西・独・墺…
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いまやアイドル人気のギンズバーグ老判事の人生
いま米政界が密かに固唾をのんで見守る案件が最高裁の判事指名問題。それは昨秋すでに決着したでしょ? といわれそうだが、実はいまや少数派のリベラル派判事のうちルース・B・ギンズバーグは最高齢で、最近も肺…
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ナチスの美学は“美的な成り上がり”趣味
歴史上、独裁者は数あれど、この男ほどの芸術かぶれも珍しいだろう。アドルフ・ヒトラー。ドイツ軍によるパリ占領の際、彼がまず駆けつけたのは大統領府のエリゼ宮ではなく、芸術の華とうたわれたオペラ座だったの…
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「病んだ時代」に立ち向かう孤独
いつの間に世の中は、これほど悪徳まみれになってしまったのだろう。目を覆う偽善や欺瞞に加え、身勝手と無関心までがかくも広まったのはなぜなのか。――そう語りかける映画が今週末封切りの「魂のゆくえ」である…