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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

70年代を恋しく思う…世間を覆う閉塞感はいつまで続くのか

公開日: 更新日:

 で、車内の異様な静けさに気づいて振り返ったら、ゾッとした。乗客たちがほぼじゃなく、近くに座ったお婆さんと我ら2人を除く全員がマスクをしながらうつむいて、黙々と「スマホ」をいじっている。黙々と働いているのでなく、ひたすら世間や人の様子をうかがい見ていた。窓から秋空を見て沈思黙考する若者は誰ひとりおらず、まるでサナトリウムの病棟だ。中年のひとりぐらい単行本でも広げていてほしかったよ。お婆さんの隣では若い女がゲームに没頭、その隣の女はスマホに顔を寄せて動画をのぞいてる。この先、何世代か時を経ると人間の首は前に折れっぱなし、目は乾きっぱなし、景色はスマホで写しっぱなしで記憶力も失った新人種に進化、いや退化してそうだ。だから、車内にいるのが耐えられず、「学術会議」のあの6人じゃないが、こっちも除外されたくなって、次の駅でホームに飛び出した。

 降り立つと、秋晴れだったので深呼吸をして気を取り直したが、でも、世間を覆う閉塞感はいつまで続くのか。10年以上続いてきた冷たい世間。いや、もう人は世間すら感じる余裕もないのか。

 中年も学生も対人対物すべてはスマホを頼って、「いいね」と合わせてくれる相手だけと通じ、いつも首をうつむけて道を歩き、車が突っ込んできても気づかず、マスクの中で息をひそめている。なんて冷たい光景だろう。

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