著者のコラム一覧
伊藤さとり映画パーソナリティー

映画コメンテーターとして映画舞台挨拶のMCやTVやラジオで映画紹介を始め、映画レビューを執筆。その他、TSUTAYA映画DJを25年にわたり務める。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当。レギュラーは「伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談&監督対談番組(Youtube)他、東映チャンネル、ぴあ、スクリーン、シネマスクエア、otocotoなど。心理カウンセラーの資格から本を出版したり、心理テストをパンフレットや雑誌に掲載。映画賞審査員も。 →公式HP

映画賞候補!芳根京子「Arc アーク」で挑んだ前代未聞の挑戦、17歳から100歳超まで演じきる

公開日: 更新日:

 新型コロナウイルスが猛威を奮う世界の中で、ワクチンを打たない選択をする人もいます。個人の意思を尊重する現代社会で、コロナ禍により重症患者の方が亡くなられたりと誰もが「死」を身近に感じるようになってしまいました。

 そんな中、公開となった映画「Arc アーク」は、「蜜蜂と遠雷」の石川慶監督が、ケン・リュウさんの短編小説に魅せられ映像化し、コロナ禍直前の2020年3月にクランクアップ。偶然か、はたまた必然か、映画はまさに死生観と共に人生の選択を描いた壮大な命のドラマであり、不老不死の薬が開発され、人類で初めて新薬を打ったひとりの女性の長い人生の旅を描いているのです。

■前代未聞の挑戦“変わらずに老いる”ということ

 今作で2021年度の映画賞にノミネートされるのではと囁かれているのが、主人公リナを演じた芳根京子さん。彼女は17歳から100歳以上までを一人で演じきっているのですが、不老不死の薬を飲んだお陰で外見的にも老いることはないという設定から特殊メイクを施すでもなく、視線や歩き方、声の速度や佇まいで年齢を“感じさせる”という難易度の高い演技アプローチを見せてくれます。

 例えば米アカデミー賞13部門にノミネートされた「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」では、80代の老人の姿で生まれた主人公が0歳で生涯を終えるまでをブラッド・ピットが特殊メイクを施し、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされるほどの熱演を披露したわけですが、芳根京子さんは特殊メイクに頼らずに、役者としての想像力を駆使し、仕草や佇まいだけで演じきったと考えれば、それがどれだけ難しいことか理解できるかもしれません。

 こういった「ベンジャミン・バトン」や「Arc アーク」ような「役者の演技をとことん堪能できる」映画は、映画賞の中でも主演男優賞、主演女優賞に多大なる影響を与えます。主演の演技により物語に没入し、信憑性を与え、それがSFモノならば、あたかも近い未来に起こるかもしれないとまで思わせたら映画は成功といえるのです。

内面から“100年の厚み”を表現

 果たして芳根京子さんはどう役を生み出していったのか? 芳根京子さんにインタビューした際、話していたのは「衣装とメイクに助けられました」ということ。そうはいっても10代の主人公はパーカーというラフなスタイル、30代の主人公はスーツを着て洗練された大人の女性に成長したということを視覚的に印象付けていますが、その先の100歳ともなると、24歳の芳根京子さんにとってはもはや想像の世界でしかないわけです。

 それでも、劇中で風吹ジュンさん演じる女性の「足音で年齢が判る」という言葉がしっくりくるように、体重が軽くなった高齢女性を思わせる静かな歩き方でスクリーンに姿を現し、内面から100年の厚みを表現しています。

 そんな芳根京子さんの今年度における映画公開作品は、父親殺害容疑で逮捕された女子大生・環菜をエキセントリックに演じた「ファースト・ラヴ」と本作。コロナの影響で残念ながら公開が来年に延期となった「峠 最後のサムライ」では、時代劇の所作も美しく、存在感を残しています。

主人公・リナの選択、映画「Arc アーク」のメッセージ

 映画「Arc アーク」では、共演者の寺島しのぶさんや、岡田将生さん、小林薫さん、風吹ジュンさんといった錚々たる面々を唸らせ、多くの俳優が仕事をしたいと切望する石川慶監督が生み出す見たこともない世界の中で、コロコロと表情を変えていくリナの成長を演技で体現した芳根京子さん。

 彼女のリリカルな演技により、誰もが自分の人生の主人公であると気付かせられた映画「Arc アーク」。物語では、不老不死の薬を打つか打たないか選択できる中でリナは打つことを選びますが、果たして自分だったらどうするか? 一生涯をかけて何を手にし、何を失うのか? この映画が問いかけるメッセージは非常に興味深いものなのです。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  3. 3

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  4. 4

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  5. 5

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  1. 6

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  2. 7

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  3. 8

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」に潜む危険な兆候…「花咲舞が黙ってない」の苦い教訓は生かされるか?

  5. 10

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  3. 3

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  4. 4

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  5. 5

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  1. 6

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  2. 7

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  3. 8

    女優・佐久間良子さんは86歳でも「病気ひとつないわ」 気晴らしはママ友5人と月1回の麻雀

  4. 9

    カンニング竹山がフジテレビ関与の疑惑を否定も…落語家・立川雲水が「後輩が女を20人集めて…」と暴露

  5. 10

    “下半身醜聞”川﨑春花の「復帰戦」にスポンサーはノーサンキュー? 開幕からナゾの4大会連続欠場