著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

教団に家族を破壊されてきた41歳は、ロストゼネレーションの極北だ

公開日: 更新日:

 それより、教団に家族を破壊されてきた41歳の犯人の過去を思うと哀れでならない。母親が入信して家がめちゃくちゃになっても、自活のために自衛隊に入り、挙げ句に自殺未遂までして保険金を家族に残そうとしたなんて聞くとなおさら、哀れだ。彼はロストゼネレーションの極北だ。母親が破産した02年から20年間、就職氷河期をやり過ごし、母親に苦しみもがいてきたのだ。好きこのんで道を外れた無頼者でもなく、寄る辺ない者になるしかなかったのだ。不安や不満をぶつける相手もいなく、誰も助けてくれない。孤立感の最たるものだ。彼こそ、既に何年も前から死に始めていたんだろう。

 もう半世紀前……あの狙撃現場の奥の今のターミナルほど広くないバス停から、遅刻した朝は奈良交通バスに飛び乗り、高校に通ったものだ。現在の駅ビルやショッピングモールはなく、小さな店が並ぶ通りだった。3年生の秋の文化祭のために8ミリ映画を作ったのを思い出す。大学受験体制と極めて権威主義的な校風に耐えているオナニー好きな男子生徒が「正義の味方」と名乗る仮面の男に狙われ、無人の廊下で撲殺されるという内容で、映研の顧問教師が上映許可しなかった。「おう上等だ、だったらゲリラ上映だ」と物理教室を勝手に使って生徒らに見せたのが、我が第1作「奇談・オレたちに明日はない」(70年)、製作費2万円の作品だ。学歴社会のベルトコンベヤーに乗せられてる自分に気づけ! 大学に飼われて社会の部品になるな! そんなアジテーション映画だった。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  4. 4

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  5. 5

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  1. 6

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  2. 7

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  3. 8

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  4. 9

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  5. 10

    今田美桜「あんぱん」に潜む危険な兆候…「花咲舞が黙ってない」の苦い教訓は生かされるか?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が