著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

格闘家転身後、破竹の6連勝 聖地・後楽園ホールで停滞気味の森保ジャパンに喝!

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電光石火の早業でKO勝ち

 そして迎えた勝負の2回。彼は一気に前に出てパンチを浴びせ、最後は左膝をひと突きしてKOに追い込んだ。2月16日の「RISE FIGHT CLUB」で元プロ野球・西武の相内誠(27=K26)を倒した時と同じように、電光石火の早業で勝利を収めた。

「元K-1王者の小比類巻(貴之)会長と分析して膝蹴りが有効と分かっていました。本来はアゴを狙うんですけど、彼は下向きになりがちなので、膝をおでこに入れるつもりで狙った。対策は8割方、実行できました」と本人も試合後に満足そうにコメントした。

 2月のプロデビュー以降は練習に明け暮れた。1日3時間は当たり前。時に3部練もあり、1日5時間リングに上がることもあった。

「小比類巻道場は、練習がきつくて逃げ出したかった(苦笑)。実際、自分は44(歳)ですからね。だからこそ食事や睡眠に気を付けたり、瞑想したりと、ありとあらゆるチャレンジをした。700キロの労働馬と対峙して、手なずける試みもやりました。思考と肉体と精神をどう解放するか。それが大事なんですよね」と安彦は真摯に自らと向き合い続けている。

■「五体不満足」乙武氏が号泣して出馬を決意

 大胆かつ勇敢な姿勢に影響を受けた1人が、7月の参議院選挙に立候補した「五体不満足」の乙武洋匡氏だ。2月の相内戦を最前列で見た彼は、その場で出馬を決意したのである。

「試合後、電話がかかってきたんですけど、号泣してたんですよ。『44歳で27歳の相手に立ち向かっていこうとしている安彦さんがいるのに、俺は何を迷ってるんだと。よし! 出馬しよう! と決めた』と言うんです。誰かの背中を押したいと思って格闘家になりましたけど、それが本当に叶ったのは嬉しかったですね」と安彦は神妙な面持ちで言う。

 実際、この日の対戦相手であるYO UEDAにしても「安彦さんと戦いたい」と宣言し、マッチメークを望んだ1人だ。地道な活動が、着実に効果を表しつつあると言っていい。

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