演劇えんま帳
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「斬られの仙太」分断が進む現代社会 虚無と祈りの群像劇
初演は1934年。日本演劇界の巨人・三好十郎の最初期の作品で、中・長編小説といってもいいセリフ量の戯曲で、そのまま上演すれば7時間にも及ぶが、今回、演出の上村聡史は3幕4時間20分に凝縮した。80余…
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こまつ座「日本人のへそ」“日本の中心”の虚妄を痛烈に風刺
1969年に劇団テアトル・エコーが初演した井上ひさしの実質的デビュー作にして最高傑作の呼び声の高い作品。喜劇、音楽劇、日本語へのこだわり、推理劇、どんでん返しの連続……と、その後の井上戯曲のエッセン…
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昭和虞美人草 高をくくり続ける日本人への“ロックな呪詛”
明治の青春を描いた夏目漱石の「虞美人草」を翻案し、1970年代の若者群像に置き換えた作品。「明治維新」「敗戦」という時代の断絶を知らない世代であるという意味で両者は共通している。そこに着目した作者・…
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「喜劇 お染与太郎珍道中」小劇場役者勢揃いの贅沢娯楽作
小劇場の人気俳優たちが大挙して商業演劇の殿堂・新橋演舞場に出演し話題を呼んでいるのが本作。主演は渡辺えりと八嶋智人(劇団カムカムミニキーナ)。 芸巧者の2人を中心に小劇場の人気俳優を配し、技…
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「ザ・空気ver.3」底知れない時代の闇を見据えた会心作
安倍政権によって牙を抜かれた日本のマスメディアの惨状を描いた永井愛(作・演出)の「ザ・空気」シリーズの第3弾。 舞台はテレビ局の9階会議室。 BSニュース番組「報道9」でリベラル派と…
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3~8月は公演中止に…藤原章寛、シライケイタの活躍を紹介
新型コロナウイルスの影響をもろに被ったのが演劇界だった。2月に発令された東京アラートが解除された直後の7月初旬に新宿の劇場で感染クラスターが発生したこともあって3~8月はほとんどの公演が中止になった…
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新宿梁山泊「唐版・犬狼都市」鮮烈なラストシーンに震撼
演劇の町・下北沢では小田急線の線路跡地を利用したさまざまなイベントが展開されている。線路街空き地では演劇の町を築いた「本多劇場グループ」と連携し、新宿梁山泊が「唐版・犬狼都市」を上演中だ。唐十郎が作…
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「闇の将軍シリーズ」主人公は角栄、安倍・菅政治を批判
新宿御苑前の劇場サンモールスタジオで展開中のJACROW「闇の将軍シリーズ」一挙3作連続上演(作・演出=中村ノブアキ)は今の安倍―菅政治への強烈な批判とも読み取れて面白い。 主人公は元首相・…
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「星をかすめる風」韓国の国民的詩人をめぐるミステリー
原作はイ・ジョンミョンの同名長編小説。「空と風と星の詩人」と呼ばれ、日本でも多くのファンを魅了する韓国の国民的詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)の最期の日々をモチーフにしている。 尹東柱は戦時中…
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「人間合格」太宰治の半生から節操なき“戦後日本人”を描く
若き日の太宰治に焦点を当てた井上ひさし作の評伝劇。 津島修治(太宰治=青柳翔)は、帝大入学のため青森から上京、学生下宿で貧乏学生の佐藤浩蔵(塚原大助)、山田定一(伊達暁)と出会い、たちまち意…
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「対岸の絢爛」IR問題の闇に斬り込む火を吐くような論戦
新型コロナウイルス騒動で公演中止が相次ぐ演劇界だが、感染予防に細心の注意を払いながら公演を敢行する劇団も多い。劇作家&演出家の中津留章仁が率いるトラッシュマスターズもそのひとつ。社会派劇団と呼ばれる…
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「泣くロミオと怒るジュリエット」世相表すダークな純愛劇
日本映画批評家大賞を受賞した映画「焼肉ドラゴン」で監督を務めた劇作家&演出家、鄭義信の作・演出による猥雑でダークでポップな舞台。 シェークスピアの時代もそうだったようにオールメール(男優のみ…
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二兎社「私たちは何も知らない」時代に抗した女性群像劇
「ザ・空気」(2017年)で報道現場の萎縮・忖度・自己規制という日本社会を覆う“空気”の正体に迫り、第2弾「ザ・空気2 誰も書いてはならぬ」(18年)では記者クラブ制度の弊害を描くなど、マスコミのタブ…
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「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」歌姫の歌唱競演が圧巻
ブロードウェーで活躍する新進気鋭の作曲家、クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニーと日本版脚本・演出の板垣恭一ら日本チームが合作した世界初演のロックミュージカル。 19世紀半ばのアメリカを…
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軍人と海の男の対立「最貧前線」は戦前化する日本への警鐘
宮崎駿が模型雑誌に発表した「宮崎駿の雑想ノート」のエピソードのひとつを舞台化したもの。わずか5ページの短編を井上桂が脚本化、一色隆司が演出した。 太平洋戦争末期、福島の漁船「吉祥丸」が特設監…
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「世襲戦隊カゾクマンⅢ」アベが嫌いな戦後民主主義を体現
小劇場から商業演劇、テレビドラマの脚本と引っ張りだこの田村孝裕の作・演出。2014年に初演し、17年に第2作。そして今回が最終章となるカゾクマン・シリーズ最新作。 代々、世襲制で家業の「ヒー…
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劇団昴「Other People's Money 他人の金」格闘技のような激しい演技の応酬
1991年に映画化(日本未公開)されたジュリー・スターナーの戯曲をこのところ活躍めざましい小笠原響が演出。舞台という四角いジャングルの中で役者たちが激しい演技の応酬をする格闘技のような舞台となった。…
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イキウメ「獣の柱」が誘う日常と隣り合わせの不思議な異界
SF、オカルト、ホラーの手法を駆使し日常と隣り合わせの異界に潜む不思議感を独自の視点で描く前川知大(作・演出)の作品。2013年に上演されたバージョンの改訂版。 舞台は2001年の日本。ある…
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劇団東演創立60周年記念「マクベス」役者の身体性で魅了
モスクワ・ユーゴザパト劇場との提携公演。演出のV・ベリャコーヴィッチ(翻案・美術・衣装も)が2016年に急逝したため、現・芸術監督のO・レウシンがベリャコーヴィッチの演出を基に日本人スタッフと共同で…
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濃密なサスペンスホラー「山犬」で際立ったAKB48の個性
脚本・演出が劇団鹿殺しの丸尾丸一郎(原案=入交星士、音楽=オレノグラフィティ)、出演がAKB48とダンス集団コンドルズ。まさに異種格闘技だ。 卒業して10年目の高校同窓会の前日に、「私たちが…