「対岸の絢爛」IR問題の闇に斬り込む火を吐くような論戦
トラッシュマスターズ「対岸の絢爛」
新型コロナウイルス騒動で公演中止が相次ぐ演劇界だが、感染予防に細心の注意を払いながら公演を敢行する劇団も多い。劇作家&演出家の中津留章仁が率いるトラッシュマスターズもそのひとつ。社会派劇団と呼ばれるように今回はIR問題がテーマ。
IR(Integrated Resort=統合型リゾート)とは国際会議場やホテル、レストラン、劇場、映画館などと一体になった複合観光集客施設のことで、今問題になっているのは、そこにカジノが併設されること。横浜ではカジノ誘致に舵を切った市長にギャンブル依存症や治安に不安を抱く市民が対決姿勢を強めている。衆議院議員による贈収賄事件も起きた。カジノ問題は喫緊の政治問題なのだ。
物語は3つの時間を往還する。
1つは第2次大戦中の九州の小さな漁村を舞台にした民間漁船の軍事徴用問題。2つ目は1980年代にH県F市で起きた架橋計画問題。そして3つ目は近未来のY市でのカジノ構想反対運動。それぞれモデルとなる事件は明らかだ。
この3つの時間軸を生きたある一家三代の物語として構成されている。