文庫で読む 医療小説
-
「赤ひげ診療譚」山本周五郎著
江戸幕府直轄の小石川御薬園に、貧しい人たちのための施療所、小石川養生所が開設されたのは1722(享保7)年。小石川伝通院の町医者、小川笙船の幕府への建言によって実現したものだ。本書の主人公、赤ひげこ…
-
「柿のへた 御薬園同心 水上草介」梶よう子著
小石川植物園は、4万8800坪の広大な敷地に約4000種の植物が栽培され、本館に収蔵されている植物標本約70万点という世界有数の植物園。その前身は将軍綱吉の時代に誕生した幕府直轄の小石川御薬園で、将…
-
「ふたり女房 京都鷹ヶ峰御薬園日録」澤田瞳子著
江戸の初期に明の「本草綱目」が紹介されたことがきっかけに日本でも本草学が発展した。それに伴って日本各地に薬用植物園(薬園、御薬園)が開設されるようになる。御薬園は、各種の薬用植物の維持と増産、また新…
-
「おいち 不思議がたり」あさのあつこ著
日本初の公認女性医師は明治18(1885)年に医術開業試験に合格した荻野吟子だが(シーボルトの娘の楠本イネはそれより前に実質的な医療を施していた)、それ以前にも医学を志そうとする女性もいたに違いない…
-
「春秋の檻 獄医立花登手控え一」藤沢周平著
現在の日本では、刑務所、少年鑑別所などの矯正施設には矯正医官が置かれ、被収容者の健康診断や病気になった者の治療、施設内の保健・衛生管理、感染症の蔓延(まんえん)防止などを行っている。江戸時代には現在…
-
「海と毒薬」遠藤周作著
1945年5~6月、九州帝国大学医学部で、米軍の捕虜8人に対して生体解剖をした、いわゆる「九大生体解剖事件」が起きた。米兵は墜落したB29の搭乗員で、同大外科医らが西部軍立ち会いの下で解剖手術を施し…
-
「夜明けの雷鳴 医師高松凌雲」吉村昭著
イタリア統一戦争の負傷者の救護に当たったアンリ・デュナンは「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。人間同士、その尊い生命は救われなければならない」と訴え、この原則のもとに国際赤十字組織ができ…
-
「華岡青洲の妻」 有吉佐和子著
1846年、アメリカの歯科医モートンがエーテルを使った公開実演で全身麻酔が広く普及することになったが、40年も前の1804年、日本の華岡青洲が全身麻酔による乳がんの摘出に成功していた。青洲は自らが開…
-
「シンデレラ・ティース」坂木司著
幼いころに歯医者へ行ってあまりに痛い思いをして、それ以後歯が痛くても我慢したり、歯科医院に行くことを拒否したり、ひどい場合には嘔吐や顔面蒼白、パニック障害を起こすこともある歯科恐怖症(デンタルフォビ…
-
「疑薬」鏑木蓮著
2010年前後、主要な大型医薬品の特許が次々に切れ、安価な後発医薬品(ジェネリック薬)に取って代わられ、先発の製薬企業の大幅な利益減が予想されるという問題が起きた。本書は、医薬品業界を襲ったこの大き…
-
「誤飲」仙川環著
医師が処方した薬は、他人に譲ったり服用させることは禁じられており、違反した場合には罰則が科される。現に、薬剤師が向精神薬を転売目的で中国人ブローカーに横流ししたとして、逮捕されるなどの事件も起きてい…
-
「薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理」塔山郁著
薬剤師は、医療ドラマでも裏方的な存在だが、昨秋の石原さとみ主演のテレビドラマ「アンサング・シンデレラ」は薬剤師を主役としたドラマとして注目を集めた。薬剤師には調剤や服薬指導などのほかに、医師の処方箋…
-
「深紅の断片」麻見和史著
テレビの医療ドラマで、災害など多数の傷病者が同時に発生した際に、治療優先順位を決定するトリアージの場面が登場する。その際、トリアージタッグという、黒(死亡)、赤(要緊急治療)、黄(待機可能)、緑(軽…
-
「移植医たち」谷村志穂著
1968年、日本で初の「和田心臓移植」は大きなスキャンダルを引き起こし、日本の移植医療は大きく立ち遅れることになった。この重たい扉を開いたのは、肝臓移植のパイオニア、米国ピッツバーグ大学のトーマス・…
-
「院内刑事」濱嘉之著
コロナ禍で病床が逼迫し、一般の人たちが自宅療養を強いられている中、一部政治家などが優先的に入院をしていたことにネット上で非難が寄せられていた。また、収賄などの疑惑をかけられた政治家が体調不良を理由に…
-
「それでも、医者は甦る」午鳥志季著
SFなどのタイムトラベルものの一種にタイムリープがある。基本的には、自分の意識のみが過去や未来に移動することをいう。日本では筒井康隆の「時をかける少女」が有名だ。ケン・グリムウッドの「リプレイ」もタ…
-
「偽装診療」 仙川環著
外国人労働者の健康保険の「ただ乗り」問題というのがある。観光などを目的にする者を除いて日本で就労する外国人には健康保険が適用される。しかし、1年未満の滞在で保険料を払うことなく、治療を受けてすぐ自国…
-
「医学のたまご」海堂尊著
海堂尊といえば、「チーム・バチスタの栄光」や「ブラックペアン1988」などのシリアスな医療ミステリーのイメージが強いが、本書は中高生向けに書かれたもので、ごくフツーの中学生がひょんなことから大学の医…
-
「がん消滅の罠」岩木一麻著
生命保険の特約のひとつにリビングニーズ特約がある。余命6カ月を医師から宣告された場合、支払われる死亡保険金の一部または全部を生前に受け取れる制度だ。本書はこの特約がひとつのカギとなる医療ミステリー。…
-
「臨床探偵と消えた脳病変」浅ノ宮遼著
「症状」はあるのに何の病気かわからない。そのような病気を「未診断疾患」という。最近ではこうした未診断疾患に対して遺伝情報からアプローチする研究も行われているようだが、疾患の原因が究明できないというのは…