「九ちゃん死亡」同日の紙面に自身の婚約記事 悲しい偶然
スピード婚約である。
「坂本九さんのショーの司会をやってた縁で、ご夫妻に仲人を頼みました。快諾してくれたんで喜んでたのもつかの間、あの日航機墜落事故ですよ」
1985年8月12日、御巣鷹山に墜落した日航機の乗客の中に坂本九がいた。
「九ちゃん死亡」を報じる同じ日のスポーツ紙に、「コント・レオナルドの石倉三郎 婚約」という記事が載った。何たる悲しい偶然だろうか。
「まったく、そんなこと、あり得ないよね。それで喪に服して、式と披露宴を1年延期したんです」
披露宴の司会は兄貴分のビートたけしが務めた。私は小説雑誌に連載していた芸人伝で三郎を取り上げた縁があって出席したが、なんとも楽しい祝宴であった。
「芸人仲間が大勢来て、祝ってくれました。祝辞を述べるのに登壇したポール牧さんがコントの時と同じようにずっこけて倒れたり、白木みのるさんを、たけちゃんが『捕まった宇宙人です』って紹介したり、笑いが絶えなかったね」
私の中では、三郎の幸せそうな表情が印象に残っている。 =つづく
(聞き手・吉川潮)