2022年ドラマ界を総括! 強い印象を残した“秀作5本”をメディア文化評論家が徹底解説
社会現象になった「silent」
10月クールは実り豊かなものとなった。まず、「silent」(フジテレビ系)がある。ヒロインの紬を演じたのは川口春奈だ。高校時代の恋人・想(目黒蓮)と8年ぶりに再会するが、彼は耳が聞こえなくなっていた。それが突然姿を消した理由であり、空白の時間を埋めながら自分たちの未来を探っていく2人。音のない世界で歩み寄る男女の本格派ラブストーリーだった。
手話による会話場面がじっくりと描かれ、見る側は表情のかすかな変化も見逃すまいと画面から目が離せない。とっぴな事件や出来事ではなく、それぞれの日常を丁寧に見せることで静かな共感が広がっていった。
やがてロケ地に人が集まる「聖地巡礼」現象が起き、見逃し配信サイト「TVer」の再生回数が最高記録を更新し、放映時のツイート数も国内トレンド1位を獲得するなど、一種の社会現象となる。役者陣の演技力はもちろんだが、登場人物たちの複雑な感情を繊細に表現する演出も見事だった。