「秀山祭」吉右衛門三回忌追善 松本白鸚の22分“ひとり芝居”に「到達点」を見た
「金閣寺」は雪姫を、中村児太郎と中村米吉のダブルキャスト。米吉の日に見たが、勝ち気というか強い雪姫で、中村歌六の松永大膳の影が薄い。松本幸四郎の「土蜘」はポスターの写真のほうが、はるかにいい。不気味さが足りない。
というわけで、1時間以上の「金閣寺」「土蜘」を、22分の「二条城の清正」が吹き飛ばす。これが役者としての格の違いだ。
夜の部は、まず又五郎・歌昇・種之助、そして歌六による「車引」。歌舞伎座の舞台が広く感じた。みなどちらかというと小柄なほうだが、それだけが理由ではないだろう。猿之助も小柄だが、舞台が広いと感じたことはなかった。
次が尾上菊之助・丑之助による「連獅子」。もともとは対等の大人の役者が演じていたが、最近は実の父子で演じることが多い。だが、菊五郎・菊之助ではやっていないようだ。菊之助としては2度目の親獅子。パワーというよりも、形の美しさを徹底的に追い求めている。その要求に丑之助が応えている。かわいいとかけなげといったレベルを超えている。
最後が幸四郎の「一本刀土俵入」。お蔦を演じる中村雀右衛門が久しぶりに芝居を見ている気分にさせてくれる。雀右衛門は長く吉右衛門の相手役をしていたため、最近は大きな役での出番が少なく、もったいない。