AIが進化すればするほど人間対人間の医療が見直されるだろう
心臓領域の診療では、聴診、心電図、X線、超音波(エコー)、CT、MRIなど、さまざまな検査を駆使して診断が行われています。それぞれの検査機器で、正常なパターンと異常なパターンに関するデータが膨大に存在しているので、それらを学習して評価を下すAIとの相性がいいといえるでしょう。しかもAIは、進歩の目覚ましい4Kや8Kのような高精細映像データをデジタル化して使えることから、人間の目では認識できないようなわずかな異常を見つけ出すことができるので、心臓病を早期発見するための診断ツールとして、AIはますます進化していくのは間違いありません。
これからの循環器医療では、AIが搭載された診断機器が当たり前のように使われ、どのようなエンジンを持ったAIがどの部分の異常を疑ってどのように評価したかということと、その評価に対して専門医が最終的にどう判断したかという情報が、患者さんに提供される形になっていくでしょう。
患者さんに対する医師の説明は、「AI診断でこんな心臓トラブルが疑われているから精密検査したほうがいい」といった感じになると思われます。診断機器にはAIが搭載されていない場合でも、総合的な評価を行うAIが利用されるようになるでしょう。たとえば、CTやエコーなどの検査結果や、アナログで行う聴診や血圧測定などのデータを電子カルテに打ち込むと、AIが疑われる病気の候補を3つ提示します。医師は、①ならその日は帰宅しても問題ない、②ならできる限り早く治療を始めたほうがいい、③なら予断を許さないからすぐに治療を開始すべき……という判断だけを下し、AI診断にのっとって治療にあたるという流れが一般的になっていくと考えられます。究極のところでは、AIによるデータ解析を行っていないとエビデンスとして認められず、診療ガイドラインも「AIが保証している……」といった注釈がつくようになるかもしれません。