絶好調の大谷翔平 二刀流「開幕から完全復活」に落とし穴

公開日: 更新日:

 今季、二刀流の完全復活を目指す大谷翔平(26=エンゼルス)の評判が上々だ。

 日本時間4日、レンジャーズとのオープン戦では中堅バックスクリーンを越える142メートルの特大本塁打を放ち、米メディアを仰天させた。

 打席同様、マウンドでも順調な仕上がりを見せており、2月27日のフリー打撃では球速が100マイル(約161キロ)をマーク。「体の使い方は昨年、私が見た時よりもはるかにいい」とマドン監督をニンマリさせている。

■右肘手術から2年半

 指揮官が絶賛したように、体調がいいのは間違いない。右肘の靱帯を修復するトミー・ジョン(TJ)手術から間もなく2年半が経つ。昨季は二刀流復帰を期待されながら、わずか2試合に登板しただけで右肘周辺の筋肉を痛めた。「(マイナーの)実戦で段階を踏んで投げていなかったし、気持ちよく腕が振れなかった」と、本人は復帰が時期尚早だったことを明かしている。どうやらメスを入れた患部が体になじまないまま実戦マウンドに上がっていたようだが、そんな状態は解消された。2019年9月に手術した左膝も問題ない。要するに速い球を投げ、打球を遠くに飛ばせる状態にあるのは間違いない。

球速以上に制球力の向上が急務

 しかし、不安がないわけではない。Jスポーツのメジャーリーグ中継で解説を務める評論家の三井浩二氏がこう言う。

「メジャーには、速球に強い打者がゴマンといるだけに、真っすぐが走っているだけでは抑えられません。渡米1年目の直球の被打率(.382)が高かったことからもそれは明らかです。大谷は高めの直球と追い込んでからのスプリットで勝負するタイプです。有利なカウントに持ち込むためにも、まずは外角低めへの制球力を向上させなければ、苦しいマウンドを強いられると思う。キャンプではチェンジアップを磨いていますが、日本ハム時代は決して精度が高いとは言えなかった。チェンジアップは肘への負担が少ないだけに、マスターすれば少ない球数で長いイニングを投げることが可能です。投球の幅を広げるためにも、開幕までにしっかりと身に付けられるかどうかが課題でしょう」

 大谷はオフの間、トレーニングを欠かさず、ベスト体重の95キロでキャンプイン。三井氏によれば、太くなった二の腕、上半身は「まるで打者のよう」だという。

 右肘や左膝も含めて万全になった体をさらに鍛えた成果がこの時期の161キロという数字につながったのだろうが、三井氏も言うように大谷にとって何よりも重要なのは球速以上に変化球を含めた制球を磨くこと。本人の意識が変わらない限り、マウンドでは期待を裏切りかねない。

■打ち取られるパターン

 打撃も懸念はある。この日、特大の一発を放った相手は招待選手のクルーズ。メジャー実績のない22歳の右腕がカウント3―2から2者連続四球を嫌ってストライクを取りにいった真ん中高めのストレートを放り込んだもの。2日のホワイトソックス戦の2安打にしても二線級からのものだ。

「大谷は、投手との勝負は打席に入る前に決まると話しています。打てそうな感覚で打席に入れるかが重要だと。そういった意味で、本人がボールの見え方がよいと言っているのはプラス材料ですが……」と、現地特派員のひとりはこう続ける。

「足を上げたり上げなかったり……フォームがまだ、しっかりと固まっていないのです。昨年は外角低め、ボールになるツーシームを振らされて空振りかボテボテの内野ゴロに打ち取られるパターンがほとんどだった。相手チームにかなり攻め方を研究されていた。本人は自分なりに考え、打撃コーチと特打を重ねましたけど、有効な打開策は見つからなかった。開幕後の真剣勝負で、同じ攻め方を克服できる保証はどこにもないのです」

 昨季は打率.190で、得点圏打率はさらにヒドい.143(42打数6安打)。「今季の打順が昨年の3、4、5番から2番に繰り上がるのは、出塁率の高い1番フレッチャーと、3、4番のトラウト、レンドンの間に置くことで、大谷の勝負弱さを改善したいという首脳陣の思惑もあると思います」とはスポーツライターの友成那智氏。だとすれば首脳陣は現時点で大谷の打撃を信用していないということになる。

 大谷の状態がいいからといって、開幕後も二刀流でブレークするとみるのは早計だ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  2. 2

    センバツVで復活!「横浜高校ブランド」の正体 指導体制は「大阪桐蔭以上」と関係者

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希の肩肘悪化いよいよ加速…2試合連続KOで米メディア一転酷評、球速6キロ減の裏側

  4. 4

    阪神・佐藤輝明「打順降格・スタメン落ち」のXデー…藤川監督は「チャンスを与えても見切りが早い」

  5. 5

    PL学園から青学大へのスポ薦「まさかの不合格」の裏に井口資仁の存在…入学できると信じていたが

  1. 6

    巨人・坂本勇人は「最悪の状態」…他球団からも心配される深刻打撃不振の哀れ

  2. 7

    ソフトB近藤健介離脱で迫られる「取扱注意」ベテラン2人の起用法…小久保監督は若手育成「撤回宣言」

  3. 8

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 9

    巨人・坂本勇人2.4億円申告漏れ「けつあな確定申告」トレンド入り…醜聞連発でいよいよ監督手形に致命傷

  5. 10

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が