在宅にせよ病棟にせよ 今や老後は「牢獄」だ

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「介護漂流」山口道宏編著

 介護したりされたりの高齢者。在宅にせよ病棟にせよ、今や老後は牢獄だ。国の掲げる「自助、共助、公助」というスローガンのむなしさを知れ――。

 今年3月、最高裁で下された注目の裁判の判決。名古屋で91歳の認知症男性が線路に入り込んで列車にはねられた事故。男性は即死したが、JR東海は上下34本の運休などで最大2時間1分の遅れが生じた責任を問い、遺族に損害賠償を請求。1審はJR勝訴で720万円の支払い命令。2審では見直しの結果、賠償金額が半減し、長男の監督責任はなくなったものの、86歳の妻ひとりの責任とされ、超高齢化社会で一方的に家族に責めを負わせる判断そのものは変わりがなかった。しかし最高裁では家族に責任なし、一瞬の居眠りも許さないほどの監督義務もなしとしてJRの逆転敗訴が確定したのだ。

 本書はこの象徴的な出来事に始まり、在宅介護の現状、ヘルパーの高齢化、高齢者の単身化などさまざまな面から高齢化社会と介護の実情に迫っていく。編著者は現役の新聞記者。元新聞記者で現在は介護福祉士をしている女性らとチームを組み、拡大する現状をルポしたもの。

 在宅介護に必要なのは「孤立しない、させない」社会の支援だという編著者の言葉がしみじみ実感される。(現代書館 1600円+税)

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