大量“辞退”は兵庫県職員だけじゃない…教員に続き「地方公務員」まで不人気になったワケ
大都市の国立大教員養成学部では半数が教員以外の道へ
昭和の時代、学研高校生向け月刊誌『高校コース』で、いつも読者の人気職業で上位を占めていたのが、教師であった。昭和から平成にかけて連続テレビドラマ『3年B組 金八先生』や『飛び出せ!青春』などが大人気になり、教師は中高生にとって身近で魅力ある職業人だった。
当時の教員養成系学部は地方国立大が主流だったこともあって、地方進学校の生徒には教師人気は高かった。ただ平成に入ると少子化が進み始めて生徒も少なくなり、特に地方では平成の大合併で自治体が激減し、小中学校の統廃合が進んだ。将来の教員採用予定数も現状維持できるか、という状況になった。
その結果、一時は国立大学教員養成学部に教員免許取得を義務付けない、いわゆるゼロ免課程が続々誕生。地方国立大学にとっても、運営費交付金などは減らされず、多様な学びを確保できるという魅力もあった。ところが、その後、団塊の世代の教員定年退職の大幅な増加や少人数教育の導入があり、徐々に教員採用の復活の動きが強まり、令和に入るとゼロ免課程は廃止されることになる。他の学部に再編するケースもあった。
■3年次やアスリート枠も 教員試験の受験者集めに四苦八苦
令和の現在、大都市圏での教員人気はダウンしている。特に公立小中学校の職場環境の厳しさが原因だ。英語教育やデジタル教育の導入のほかにも専門知識もあまり関係ないクラブ活動の指導、保護者のクレームなど、本来の授業指導以外の仕事や対応が増えている。その割には給与が上がらないし、残業代も頭打ち、コスパの悪い仕事のサンプルとなっているようだ。
そのため大都市の国立大教員養成学部では、教員以外の職業を選ぶ学生が増えている。横浜国立大学では50%を上回り、千葉大学や埼玉大学では45%前後となっている。教員資格があれば学習塾など教育産業の仕事もあり、各都道府県の教員採用試験にこだわらなくていい。
全国の教育委員会では教員採用受験者を増やすために、志願者増の様々な対策は苦労している。大学3年次からの前倒し採用試験は全国的に展開されている。たとえば北海道教育委員会の2026年度の公立学校教員採用試験では、大学3年生の受験を可能にしたほか、五輪出場経験などの実績があれば、教員免許状がなくても受験できる「アスリート特別選考」を設けている。
このような3年次と4年次の連続受験可能の教員試験も続々生まれ、地方では奨学金返済免除が条件の地域枠を設ける教員養成学部も増えている。