ニッポン外交の今昔

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「13歳からの日本外交」孫崎亨著

 どこまでもトランプにすり寄る安倍「抱きつき外交」。ニッポン国よ、これでいいのか!?



 本紙コラム「日本外交と政治の正体」でおなじみ、元外務省国際情報局長で駐イラン大使などを歴任した著者が、中学1年生の読者を念頭に書いたという外交入門。ベストセラーになった「戦後史の正体」では「アメリカからの圧力」が日本外交の基軸になってきたことを正面から指摘したが、本書でも「日本外交の負の遺産」と題する章でこれを解説する。

 当初、対米交渉に当たった重光葵が降ろされ、追従派の吉田茂が外相に就任。財界では経済同友会など「米国に協力することにまったく抵抗のない人びと」が米国追従の体制を固め、学界までが後追いしたことに触れている。

 文体は「ですます」調だが、内容は「水準を落とすことは一切考えませんでした」と著者自ら言うとおり、骨のある仕上がりになっている。

(かもがわ出版 1700円+税)

「戦後日本外交史」添谷芳秀著

 戦後の日本外交はアメリカの強い圧力のもとでいかに独立と自律を維持するか、その模索の連続だった。日本の自立を希求し、憲法9条を変えずに自衛隊を創設した鳩山内閣。吉田茂による日米安保条約の改定に取り組んだ岸信介も日本の主体性回復を狙っていたが、結果はむしろ基本構図の制度化に終わった。

 所得倍増計画を打ち出した池田内閣はこうした混乱を避けるべく「低姿勢」を強調。国内ばかりでなく国際政治でもそれが貫かれ、アメリカの傘の下で権力政治にも安全保障分野にも積極的に関与しないというのが歴代自民党政権の伝統となった。

 それを変えようと意気込んだのが安倍。「主張する外交」を掲げたが、憲法改正では迷走、対中外交は綱渡り、対北朝鮮の展望は「不透明」のままだ、と説く。著者は東アジアの国際政治を専門とする慶大教授。

(慶應義塾大学出版会 2400円+税)

「増補日ソ国交回復秘録」松本俊一著

 トランプに抱きつく一方、プーチンには手玉にとられているともっぱら評判の安倍首相。本書は1956年秋に調印された日ソ共同宣言で交渉の全権を託された陰の立役者の手記。66年に刊行されたが、今回53年ぶりに改題再刊された。

 貴重な歴史文書だが、素人には難解な外交交渉の背景説明のため、いまは作家になった元外務省ロシアスクールの主任分析官・佐藤優が長い解説を書いている。当時の外相・重光葵と著者の“暗闘”を含め、一般読者はまず解説から読んで本文に進むとよい。

 今回新たに、日ロ両政府が共同で作成した資料集(1992年版と2001年版)も完全収録されている。

(朝日新聞出版 2400円+税)

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