著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

竹内涼真「テセウスの船」細部見逃せない集中力必須の1本

公開日: 更新日:

 日曜劇場のタイムスリップ物といえば、大沢たかお主演「JIN―仁―」を思い出す。現代の脳外科医が江戸時代にワープする話だった。

 今回の「テセウスの船」、主人公は「殺人犯の息子」として生きてきた田村心(竹内涼真)だ。警察官だった父親、佐野文吾(鈴木亮平)が毒物による無差別殺人を行ったという、31年前にタイムスリップしてしまう。場所は事件が起きた北海道の寒村だ。

 心にとっての課題は2つある。まず、文吾は本当に殺人犯なのか。そうでないなら真犯人は誰なのか。次に、文吾が犯人であれば犯行を阻止したい。そうすれば、自分や家族に押された「負の烙印」も消えるからだ。

 このドラマ、主演の竹内は健闘しているが、父親役の鈴木の迫力が凄まじい。いい意味で主客転倒しているのが特色だ。子煩悩で職務熱心な「善人」なのか。それとも狂気を秘めた「悪人」なのか。ふっと変わる鈴木の表情から目が離せない。

 またサスペンスとしての緊張感も、よく保たれている。次々と起こる不審な出来事の真相は明かされず、見る側も心と同様、不安と疑心暗鬼を抱えたままの状態だ。しかも無差別殺人の日は確実に近づいている。

 タイムスリップ物は、未来を知る者と知らない者とのギャップが物語を動かしていく。どんな細部も見落とせない、集中力必須の一本だ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末