著者のコラム一覧
塩澤実信ノンフィクション作家

長野県生まれ。双葉社取締役編集局長などを歴任。レコード大賞元審査員。「昭和の流行歌物語」「昭和歌謡 100名曲」など著書多数。

「夜霧よ今夜も有難う」は石原裕次郎を窮地から救った

公開日: 更新日:

 当時、浜口は「愛して愛して愛しちゃったのよ」「星のフラメンコ」「バラが咲いた」などのヒットメーカー。裕次郎は「先生、いい曲を書いてくれませんか。お願いします」と直接、頼み込んだ。

 実は当時の裕次郎、ガッポリ稼いではいたが、税金もケタはずれで、納税のために大ヒット曲が欲しいときだった。

 浜口は「そりゃあ大変だな」と、裕次郎の頼みを快く引き受け、しばらくして2曲をこしらえた。それが「夜霧よ今夜も有難う」と「粋な別れ」である。テイチクの新橋スタジオに裕次郎を呼んで、ピアノで曲を聞かせた。裕次郎はすごく喜び、目に涙をためていたという。
♪しのび会う恋を つつむ夜霧よ――で始まるこの名曲。浜口は、裏町の飲み屋を舞台に、レインコートの襟を立てて登場する裕次郎を演出した。果たして、狙い通り、歌は大ヒット。

 裕次郎は、この新曲をひっさげて、その年、全国24カ所で行った「日本縦断リサイタル」を大成功させた。メインで歌ったのが「夜霧よ今夜も有難う」だった。延べ動員観客は10万人を数えた。

 こうして、ガッポリ払わなければならない税金も、リサイタルなどの成功でクリアできたわけだ。その意味で、裕次郎の窮地を救った一曲でもある。まさに“おいしい歌”なのであった。

【連載】あのヒット曲 意外な誕生秘話

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

  2. 2

    これも防災対策のひとつ? 「ソーラー充電器」は買っても秘密にしておけ

  3. 3

    加橋かつみさんが憧れたストーンズ「サティスファクション」はザ・タイガースの原点でもある

  4. 4

    TOBE人材難とNumber_i全米成功に疑問符…なぜジャニー喜多川氏の性加害が足かせなのか

  5. 5

    週刊誌2誌で評価は真っ二つ…悠仁さまがそれでも「東大に合格」できる仕組み

  1. 6

    Number_iに囁かれるキンプリ遺産の食い潰し…サマソニで持ち歌少なくデビュー曲を2回披露

  2. 7

    高野連を直撃「甲子園でリクエスト制度なぜ導入されず?」

  3. 8

    巨人・菅野智之の忸怩たる思いは晴れぬまま…復活した先にある「2年後の野望」 

  4. 9

    「ブラックモンブラン」竹下製菓が最大の危機に…事業拡大の矢先、右腕の夫と会長の父に先立たれ

  5. 10

    阪神岡田監督の去就を左右する親会社、後継者事情、健康問題、糟糠の妻・陽子夫人