オール阪神・巨人に学んだ計算通りにいかない笑いの緊張感
持ちネタのリメークが10本、新ネタが4~5本だったと記憶しています。いま考えると、阪神巨人さんは持ちネタの数も多く、話の糸口さえあれば、どんどんアドリブで話を膨らませていかれる上に、抜群の記憶力ですから、お2人にとってはそれほど大変な作業ではなかったのかもしれません。しかし、漫才作家歴3年ほどの私にとって、ひと月足らずの間に打ち合わせ、数本の新ネタ執筆とネタ合わせを同時進行で行うということが“正気の沙汰”ではありませんでした。
持ちネタといってもそのまま演じるのではなく、“つかみ”といわれる最初の1~2分は、その時々の話題を取り入れるのでリメークが加わる。さらに新ネタはいとし・こいし師匠がそうだったように、本番まで一度も舞台で試されることはなく、常にぶっつけ本番。ネタ合わせではその都度、微妙な言い回しやボケ・ツッコミが変化を繰り返しながら納得がいくまで数十回に及びます。
こういうネタ合わせのルーティンは、45周年を迎えられた現在も変わることなく、その時々のベストな笑いを作りあげるための努力は惜しみなく続きます。ご本人たちからすれば、計算通りに笑いがとれるかどうかわからないという緊張感もまた、おもしろい漫才を生み出す大きな要素になっているのだと思います。こんなお2人のネタを37年もの間、書かせていただけることが本当に幸せです。