二田一比古
著者のコラム一覧
二田一比古ジャーナリスト

福岡県出身。大学卒業後、「微笑」(祥伝社)の記者に。その後、「Emma」「週刊文春」(ともに文芸春秋)をはじめ、多くの週刊誌、スポーツ新聞で芸能分野を中心に幅広く取材、執筆を続ける。フリー転身後はコメンテーターとしても活躍。

毒舌ブーム終焉か…コロナ禍の今、情報番組MCは爽やか系へ

公開日: 更新日:

 朝から晩まで情報番組は新型コロナ一色。あえて危機をあおらなくともコロナ拡大の現状に関心度は高まる一方。そんな流れに逆行するようにTBSは麒麟の川島明をMCに起用。今や「視力検査」並みの視聴率だが、テレショップのような生活情報に特化した内容はコロナ禍の今、「朝から見たい」と思う人は少ないだろう。企画した担当者が策に溺れた感もあり、起用された川島は犠牲者かもしれない。

「TBSが朝の時間帯で勝てるのは局アナのエース・安住紳一郎しかいない」と言われている。コロナを中心とした横一線の内容なら情報番組の決め手はMCにある。朝の勝ち組・テレビ朝日の「モーニングショー」は羽鳥慎一の好感度が大きい。癒やし系の爽やかな雰囲気とわかりやすい話。玉川徹長嶋一茂ら「取り扱い注意」のパネラーとの駆け引きは神業的だ。

 フジテレビは「打倒・羽鳥」を意識したかのようにMCへ起用したのが爽やか度の高いイケメンの谷原章介。まだ羽鳥の域には達していないが、そつのない司会ぶりはこの先、期待が持てる。

 羽鳥、谷原の流れを見ていると、MCの傾向は確実に変わってきている。かつては正統派の局アナ男子が主体だったMCの世界に風穴をあけたのがラジオ出身のみのもんただった。「もの言うMC」としてテレビ界を席巻。毒舌ブームのきっかけをつくった。タレントの世界でも坂上忍マツコ・デラックス有吉弘行と毒舌タレントブームが生まれた。

「ゴゴスマ」石井亮次も癒やし系の爽やかさが売り

 みのに続き現れたのが「浪速のみの」と呼ばれた宮根誠司の「ミヤネ屋」(日本テレビ系)だった。関西弁でまくし立てるようにしゃべくる新しいタイプの宮根に「面白い」となじみの薄かった関東圏の人にも浸透。フジが送り出した実績十分の安藤優子をも蹴散らした。

 それでもキャスターの戦国時代は続く。しばらく続いた宮根の天下の前に意外な伏兵が現れる。TBSが苦肉の策で送り込んだ系列局・CBC(名古屋)の石井亮次の「ゴゴスマ」だった。名古屋ローカル番組の東京進出は「午後の枠をTBSは捨てた」と揶揄されていた。事実、スタート時は宮根の番組の足元にも及ばなかった。打ち切りも時間の問題と思われていたなか、ジワジワと数字を伸ばし、今では宮根を抜くまでになった。

 放送枠も全国に広がり、名前も全国区になった石井も羽鳥の流れをくむ癒やし系の爽やかさが売り。関西出身らしくボケもツッコミもできる万能型のMCはこれまでにいないタイプ。東国原英夫古舘伊知郎らしゃべりのプロにイジられるキャラであることも茶の間を和ませる。満を持してフリーになった今も石井人気は上昇の一途だ。

「毒舌は刺激的ではあるが飽きるのも早い。今、コロナという深刻な事態では毒舌の司会者はいらない。少しでも緩和剤になるような話術を心得た人のほうが安心して見ることができる」というのがテレビ関係者の分析。

 大阪の宮根VS名古屋の石井。令和の関ケ原の合戦は名古屋が形勢逆転。ここに男性キャスターの毒舌ブームの終わりを告げているかのようでもある。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も

    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  4. 4
    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

  5. 5
    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6
    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

  2. 7
    巨人・岡本和真「急失速の真犯人」…19打席ぶり安打もトンネル脱出の気配いまだ見えず

    巨人・岡本和真「急失速の真犯人」…19打席ぶり安打もトンネル脱出の気配いまだ見えず

  3. 8
    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

  4. 9
    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

  5. 10
    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し