著者のコラム一覧
吉田隆記者、ジャーナリスト

1984年に写真週刊誌「FRIDAY」の創刊準備メンバーとして専属記者契約を結ぶ。87年の大韓航空機爆破事件では、犯人の金賢姫たちが隠れていたブダペストのアジトを特定、世界的に話題となる。初代「張り込み班チーフ」として、みのもんたや落合博満の不倫現場、市川染五郎(現・松本幸四郎)や石原慎太郎の隠し子、小渕恵三首相のドコモ株疑惑などジャンルを問わずスクープ記者として活躍。

<32>早貴被告は「兄を幸せにしてくれますか?」の問いに曖昧にほほ笑んだ

公開日: 更新日:

「兄が幸せになるのなら、きょうだいは遺産ウンヌンに口出しをしませんから心配しないでね」

「遺産?」

 彼女はクビをかしげている。この時点で早貴被告はドン・ファンの資産がいくらあるのか全く把握していなかったと思う。ただ、彼女がドン・ファンから月々100万円の小遣いをもらう約束を交わしていたことは、私もまだ知らなかった。

「親身に面倒を見てくださる方が欲しいのよ。あなたがそうしてくれれば助かるけれど……。ワガママな兄だけど、考えてもらえないかしら」

 3人で話をしている最中にもドン・ファンからの着信が早貴被告の携帯に何度も届いていた。早く部屋に戻って来い、という合図である。

 社長の結婚したい症候群はいつものことなので、私はドン・ファンと早貴被告との結婚について、さほど気にも留めていなかった。どうせいつものようにポシャるものだと思っていたからだ。

 ドン・ファンの死後から半年ほど経ってHさんと食事をした。

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