<94>通夜の晩「ブンヤ風情が偉そうに」と絡んできた赤ら顔のM
「大体なあ、おまえはでしゃばりなんだよ。通夜も仕切っていたじゃないか。なあ」
横のSに同意を求めた。
「そうだよ」
Sもうなずいた。
「で、何が言いたいんですか?」
「分からないのか」
「分かんないですねえ」
私の反骨精神に火がつきだした。外見上はおとなしく見えるし実際におとなしいのだが、スイッチが入ると喧嘩上等で好戦的な本性が現れてくる。
「オレのほうが社長と長い付き合いなんだから」
「それで?」
「つべこべ言うんじゃないよ。だからでしゃばりなんだよ」
「では通夜も葬儀もMさんが仕切ってくれればよかったじゃないですか。葬儀屋さんが来たときにあなたもいましたよね。どうして『オレがやるから』って言わなかったんですか? オレは一度も仕切ると言った覚えはありませんよ。葬儀屋さんがオレを頼りにして、会計は担当の佐山さんに任せたというのが事実じゃないですか。何もしないでオレのことを責めるのは、お門違いだということが分かりませんか? オレは1円の報酬ももらっていないんですよ。感謝されこそすれ、批判される理由は、これっぽっちもありませんから」