やっぱりその人生ってのは無駄な時間はないなあとシミジミ…
所謂下町に住み着いて、三七、八年になりますか。その当時二十歳の若い衆が歳を偽って酒呑んでましてね、身体がいいのと、老けた顔してるから、てっきり二四、五歳だと思ってたら、ある日、「師匠《アタシの事であります》自分二十歳になりました」と宣い驚かされましたが、実に二十数年振りに会い、ヨオーヨオーてな訳で痛呑しましたネ。
コノ若い衆、西田君と云うんですが、とにかく下町っ子らしく、祭りが大好きで、やれ三社様だ深川祭りだと、東京中の祭りに目がない。祭りとくれば喧嘩がつきもの。「オマエ、祭りに行ってんのか喧嘩に行ってんのかドッチだ」「イヤ仕方ないんすよ、色々ありますから」「何がイロイロだ馬鹿! いいかげんにしろ」なんて口酸っぱく云ってたモンですが、面白いもんです。今じゃ五十を越えてやっぱり人間は落ち着くんですなあ。
「ニシダ、やっぱりお前も人間だったなあ、すっかり良い男になって結構々々」「師匠、よしまさ呼んでますから、会いたいでしょ」「エッ、オー会いたいネー、アイツ元気かよ」「アイツ、ハゲましたよ」「ハゲはお互い様よ」なんてワーワー呑んでると、よしまさ君やって来まして「師匠、お元気そうで」。