(1)生物学的な違いが寿命の差を生んでいる
2023年の日本人の平均寿命は、女性87.14歳、男性81.09歳。男女共に平均寿命は延びているが、相変わらず男が女より6年ほど命が短いままである。いったいそれはなぜなのか?
今でこそ生物学的な男女の違いに着目した性差医学が注目されているが、男性医学の父と呼ばれていた熊本悦明・札幌医科大名誉教授(私の父でもある)が医師を目指した1950年代は、女性とは違い月経・出産といったイベントがない男性については、あまり特性のない「働くロボット」のような扱いで医学的な研究はとても遅れていた。
「国家試験を受ける前にいろいろ勉強していたら、女性については教科書にたくさん書かれていたけど、男性についてはほとんど書かれていなかった。せっかく自分が男に生まれたのに、男のことがよくわからないのは残念」と、泌尿器科を志したと父は話していた。
男性のほうがストレスに弱い上に、生活習慣を整えるのが苦手で本来はさまざまなサポートが必要であるにもかかわらず、過去の男性に対する医学的な問題は、性機能の低下ばかりに関心が寄せられることも父は遺憾に思っていた。