<106>早貴被告が代理人を依頼したのはワイドショーでよく知られた弁護士
当時、ドン・ファンの怪死事件は容疑者が確定したわけではなく、早貴被告の実名と顔を誌面でさらす行為は明らかな名誉毀損であり、週刊文春も曖昧な記事を掲載していたから十分に訴えられる事案であっただろう。
ところが、早貴被告が依頼した弁護士たちは訴訟の準備を進めることなく、抗議書を出しただけでお茶を濁してしまった。そもそも名誉毀損の裁判を勝ち抜くのは至難の業で、果たしてそれがこの弁護士たちでできるのか。ドン・ファン宅の前でマスコミに囲まれ困惑しながらもうれしそうな表情を浮かべていた2人の様子から疑問に思っていたし、成功報酬も苦労の割に少ないからやりたがらない弁護士も少なくないと耳にしている。
「早貴の雇った弁護士は、まともですか?」
新潮社の知人編集者から連絡があったのは、彼女の弁護士が文春と新潮社に名誉毀損に関する抗議文を送った直後のことだった。
「なんで?」
「週刊新潮編集部の友人から聞いたんですが、抗議文ではウチの顧問弁護士の名前が文春の弁護士の名前になっていたんですって。そんなずさんなことって、ありえないでしょ?」
私は噴き出しそうになった。
そんな単純なミスをするような弁護士を代理人にした早貴被告が哀れに思えた。