「北斗の拳」連載開始40周年 生みの親が語る 武論尊「先を考えて物語を作ると、読者に見抜かれる」
「お前はもう死んでいる」──。1980年代、少年たちのハートをわし掴みにした大ヒット漫画「北斗の拳」。1983年9月、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載が始まると、瞬く間に大人気漫画へと駆け上がった。連載開始から40周年を迎える生みの親に、ざっくばらんに語ってもらった。
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「40年も経っているのに、よく認知されているなって不思議な感じがするし、ありがたいことだと思う。『北斗の拳』の根底に、少年ジャンプの王道である『友情・努力・勝利』の普遍性があったからかもしれないですね」
無敵の主人公の勧善懲悪ストーリーだけでは読者は置き去りだっただろう。
「何もない荒れ果てた世界で最終的に勝ち残る方法は何かといったら、恐らく暴力。ただ、暴力だけを描いても客は付かない。暴力の裏側にある哀しみや、何のために暴力に訴えているのかというバックボーンが大事だった。否定される暴力なのか、肯定される暴力なのか。後付けの理屈かもしれないけど(笑)」
「北斗の拳」の魅力は、まさに「後付け」の物語。さまざまなドラマが類いまれなアドリブから生まれていった。
「先を考えて物語を作ると、伏線ばかりで、読者に見抜かれる。ストーリーを作っている側が先を知らなければ、読者だって分からない。3話目を書くときにようやく、ケンシロウはなんで旅をしているんだろうと考えた(笑)。それで、恋人を追いかけている設定にして、生まれたのがユリアなんですよ。そしてユリアをさらったのが、南斗聖拳の使い手のシンであると。そもそも南斗聖拳なんて、最初は頭にはなかったですからね。ユリアを作った時に、北斗神拳に対抗する拳法として考え、北斗に対して南斗、神に対しては聖だろうということで、南斗聖拳になったんです」