「四季の国」日本に異変が!?
急激に進む 「二季化現象」に ご用心!
古来より日本は豊かな四季があり、天候の変化や咲く花々、旬の食べ物、日々の行事などでそれぞれの季節の移り変わりを肌で感じてきた。そして、四季折々の移ろいが日本ならではの独自の文化を育んできた。
ところが近年、気候変動による温暖化の影響によって春と秋が極端に短い「二季化」が進んでいるという。
■例年より早く夏が始まり、 いつまでも猛暑が続く
日本気象協会によると今年の夏は猛暑、冬は寒冬といったメリハリ型の天候をもたらす傾向が高くなる見込みとか。夏が例年よりも早く始まって急激に気温が高くなり、その上、猛暑がいつまでも長引くために春や秋の過ごしやすい時期が短くなる可能性が高いというのだ。しかも、こうした季節の二季化は過ごしやすい春と秋の楽しみを奪うという生活上のデメリットばかりか、私たち日本人の体にも大きな影響を及ぼすことにもなる恐れがあるというから話は穏やかではない。
懸念される「二季化不調」
連日多くの患者を診察している、いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長は二季化が健康に及ぼす弊害を医師としての立場からこう説明する。
「夏が早く始まって暑い期間が長く続けば続くほど熱中症が多発、中には重症化して命を落とす方が増える他、さまざまな弊害が起きてきます。その中で私が特に懸念しているのは、免疫系へのダメージです。多くの研究から、外気温が高くなると、私達の身体を常日頃から守っている免疫機能が落ちてくることが分かっています。夏場に少し喉が痛い、咳がでる、といった症状が出やすいのはこのためです。こうした免疫力の低下により、倦怠感や食欲不振、めまい、胃腸障害、頭痛などのいわゆる『二季化不調』を引き起こすようになってしまうのです」
四季がはっきりしている場合には秋口の9、10月になってから、こうした不調症状を訴える人がほとんどであったのに対して、昨今では4、5月から夏が始まり真夏日が増えてくるようになったことから、不調症状も早く出始めるようになるのが二季化不調の大きな特徴だと伊藤院長はいう。
■「⼆季化不調」が負のループを招く
夏の暑さによって免疫機能の働きが弱くなってしまう一因として、伊藤院長は腸管の血液循環不足をあげる。
多量の発汗により血管内が脱水気味になるため、血流の再配分が起こって体は火照っているのに腹部が冷たくなってしまう。それにより、免疫細胞が多数存在する腸管の状態が悪くなり、免疫力の低下に繋がるのではないかという。伊藤院長によると免疫力の低下は冬より夏のほうが顕著なのだそうだ。
「春を飛び越えていきなり夏がやってくる二季化の傾向が強まった今は体の体温調節機能が追いついていません。ですから二季化不調を防ぐためには日頃から意識して免疫力を高めるようにすることが大切です」(伊藤院長)
では、夏場の二季化不調を防ぐべく免疫力を高めるためにはどうしたらいいのか。続けて伊藤院長に聞いてみた。
「腸内環境を整え、免疫力を高めてくれる善玉菌はどんどん生まれ変わっていますので、なくなってしまう前につねにベストな状態を維持していくことが大切です。そのためには善玉菌となって働く乳酸菌を含むヨーグルトや納豆、チーズ、キムチなどの発酵食品や、善玉菌のエサとなる食物繊維、海藻類を積極的に摂る食事や疲れを癒やしてくれる入浴、軽く汗をかく程度の軽い運動やストレッチを心がけ、生活や睡眠のリズムを整えて質を高めるようにするといいでしょうね。特に高齢者では健康被害が強く出やすいので、不調を引き起こしにくい体づくりをより確実に行うようにしてください」
異常気象により、例年以上に不調を引き起こしやすい状況が迫っている。これから長く続く夏に負のループに陥らないよう、早めの対策で毎日を元気に過ごしたいものである。