息子であることの定年を迎えた…父の他界と55歳の誕生日に思ったこと
ロシアがウクライナ侵攻を開始した昨年は、54歳のぼくの気の休まることがない一年でもあった。新しいことをいくつか始めたのだ。4月から福岡RKBラジオ「田畑竜介グローアップ」に毎週生出演、時事性の高いことを忌憚なく話している。夏の参院選で山添拓候補の街宣に足を運んだら、ぼくを見つけた日本共産党の方が撮った山添さん(初対面でした)とのツーショットがネットに拡散した。隠すつもりもないから事後には関連取材も受けた。その余波で石破茂、小川淳也等の与野党議員と対話することに。田中康夫、中森明夫、島田雅彦という長年私淑してきた年長の作家の方々とのご縁ができたのも嬉しい出来事だった。そして9月、本連載がスタート──。
本業の音楽についても手を休めないよう、昨年はこれまで以上に精力を注いだ。2010年スタートのNHK-FM「松尾潔のメロウな夜」は、先ごろ無事に放送500回を迎えた(鈴木雅之さんがお祝いに駆けつけてくれたのは嬉しかった)。2019年からの私塾的音楽イベント「松尾潔のメロウな夜間授業」は、コロナ禍による中断を幾度かはさみながらも5月にようやく最終講義を終えた。映画『ホイットニー・ヒューストン』の字幕監修、天童よしみさんへの詞提供、この国を代表する詩人・吉増剛造さんとの公開対談といった新しい挑戦には大きな手ごたえがあった。本紙企画で実現した早見優さんとの40年越しの邂逅にも、何かの始まりを感じている。