SNSで最も引用されたのは「子どもの涙の上に成り立つようなアートって、ぼくら要ります?」
同ドキュメンタリーに目を開かれたぼくが、インマンさんの後に続いた。声をあげる数少ない音楽業界人として。結構な尺をとって流れたコメントの詳細はYouTubeで確認していただきたいが、スタッフの報告によればSNSで最も引用されたのは「子どもの涙の上に成り立つようなアートって、ぼくら要ります? そんなの?」の箇所だという。
ジャニーズ問題の本質はこどもの人権の蹂躙と主張してきたぼくにとっては、この報告には手ごたえがあった。山下達郎、竹内まりやといったアーティスト名こそ出なかったものの、ジャニーズ問題への発言でぼくを契約解除したスマイルカンパニーの公式ホームページがテレビ画面に大映しになるのを見て、スタッフの気概を痛感した。
コメントの掉尾を飾ったのは、アイドル評論家の中森明夫さん。中森さんは、ジャニーズ創業家の喜多川・藤島家が長年にわたってスキャンダルを封印、メディアやスポンサー企業もまたそれに加担してきたことを「天皇制」「神秘の力」「人間宣言」といったキーワードを駆使してあざやかに読み解いてみせた。
終盤で松原さんが丁寧になぞってくれたように、中森さんとぼくが共有する懸念はこの問題が年をまたいでリセットされること。なぜなら年の終わり、あるいは皇位継承などの大きな節目に、何もかも一緒くたにして全部リセットして忘れてしまうのがこの国の伝統、いや悪習だからである。