坪内祐三ロスはまだつづく
「日記から 50人、50の『その時』」(坪内祐三/本の雑誌社)が刊行された。
夏目漱石から古川ロッパまで日記をひもとく。著者は2020年1月13日、心不全で急逝した。
空に旅立って4年が過ぎても、こうやって新刊本が読めるのだから、ツボちゃんこと坪内祐三の熱心な愛読者だった私にしてみれば僥倖である。
文学から古本、テレビ、相撲、幅広い分野で評論活動をおこなってきた坪内祐三は当代一の評論家であった。
大学時代、私は人力車夫のツボちゃんを目撃している。大学祭でキャンパス誌主催の劇「人生劇場」が公開され、宣伝を兼ねて、高田馬場から早稲田まで無料の人力車を走らせた。そのときの車夫が学生時代の坪内祐三だった。当時、私のいた企画系サークルが新人・中原理恵の学園祭コンサートをおこない、景気づけに中原理恵を人力車に乗せたことで記憶に残っているのだ。