「TOKIO」はイントロの25秒で80年代をグッと引き寄せた
弾いているのは、もちろん編曲を担当した後藤次利。そのチョッパー(スラップ)ベースで、ロンドンをあっと言わせた腕前が生きている。そして、ボーカルが入ってくる直前、「♪レーミレー・ラソミ」(キーはD)を繰り返す、いかにも80年という感じのピコピコしたシンセサイザーが割り込んでくる。
80年代後半には、既存のアナログ楽器を再現する「便利ツール」のようになるシンセだが、このころは「いかにもピコピコした」シンセが最先端だったのだ。
その下で──よく耳を澄ましてほしい──後藤次利のベースが超絶技巧を決めているのである。超絶過ぎて文字では書き表せないが、低音のレンジで得体の知れない何かが、とんでもなくはじけまくっているのが分かるだろう。
ここまで何度か使ってきた「ニューウエーブ」という言葉、若い方には分かりづらかったかもしれない。私の思うニューウエーブとは、言ってみれば、このイントロそのものである。
そして、このイントロだったからこそ、「TOKIO」は80年の象徴となれた、と私は思う。