映画「長江」で35億円の借金を負った さだまさし

公開日: 更新日:

 念入りに揚子江周辺の撮影を行っていくうちに、回したフィルムは2時間20分の映画の約100倍の120万フィートにも及んだ。人件費も雪だるまのように膨らんでいった。当初はお金のことはほとんどノータッチで、夢を見るような気持ちだったが、膨れ上がった製作費を知って、地獄に突き落とされたような気分になった。もっとも、もはや引き返せない段階にきていた。

 さだはマイナス25度以下になる、11月の峨眉山(標高3099メートル)にも登り、撮影を行った。山頂で一夜を過ごし、極寒に震えながら、「明日の朝は凍死しているかもしれない。このまま死んだ方が楽かもしれない」とまで思ったという。

 しかし、何事もなく目が覚めた翌朝、峨眉山山頂からの中国の山々の神々しい姿を見て、「なるようにしかならない」と気持ちを吹っ切った。「長江」の配給収入は5億円ほど。不入りといわれる数字ではなかったものの、巨額の経費には到底及ばない。のしかかった借金は額面だけでも28億円で、金利を含めて35億円にも上る巨額。

 70年代に病気で一時期休業し線が細い印象だったが、この借金がアーティストとしてのスタイルにも影響を与えた。その後、毎年100回以上、多い年には160回ものコンサートをこなす日々が続く。日本でもっとも多くのソロコンサートを行った歌手ともいわれた。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    メッキ剥がれた石丸旋風…「女こども」発言に批判殺到!選挙中に実像を封印した大手メディアの罪

  2. 2

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  3. 3

    都知事選敗北の蓮舫氏が苦しい胸中を吐露 「水に落ちた犬は打て」とばかり叩くテレビ報道の醜悪

  4. 4

    東国原英夫氏は大絶賛から手のひら返し…石丸伸二氏"バッシング"を安芸高田市長時代からの支持者はどう見る?

  5. 5

    都知事選落選の蓮舫氏を「集団いじめ」…TVメディアの執拗なバッシングはいつまで続く

  1. 6

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  3. 8

    ソフトバンク「格差トレード」断行の真意 高卒ドラ3を放出、29歳育成選手を獲ったワケ

  4. 9

    “卓球の女王”石川佳純をどう育てたのか…父親の公久さん「怒ったことは一度もありません」

  5. 10

    松本若菜「西園寺さん」既視感満載でも好評なワケ “フジ月9”目黒蓮と松村北斗《旧ジャニがパパ役》対決の行方