"孫子の兵法"から読み解く 「戦わずして勝つ」子育て論
総務省が発表した「企業の人工知能(AI)の導入状況に関する各国調査」によれば、AIを導入している企業は39%だった。もはやAIが当たり前に存在する社会は、すぐそこまで来ているのかもしれない。そんな近い将来に向けて「AIに負けないための子育てをすべき」と語るのは、『孫子の兵法から読み解く AIに負けない「すごい知能」の育て方』(発売=講談社)の著者であり、学校法人小島学園認定こども園ひよし幼稚園理事長・園長でもある小島宏毅氏だ。(以下本文より抜粋しています)
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「用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るはこれに次ぐ」
現代語訳:戦争は敵国を屈服させないで勝つのが上策であり、敵国を屈服させて勝つのは次善策である。
育児対訳:子育ては、子どもの存在を否定しないことが最も良い方法であり、子どもを否定したり、親が一方的なものの言い方をしたりして子どもの心を傷つけてしまうような子育ては、二の次です(子育てに次善策は不要です。最善策を求めましょう)
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武力で屈服させることなく勝つことを「謀攻(ぼうこう)」といいます。孫子は、「武力で攻撃して国土を破壊し、屈服させるのは最善策ではなく、国土は荒らさず、兵力も消耗させないで相手を負かすのが一番である」と述べていますが、これが孫子の兵法で有名な「戦わずして勝つ」ということです。
兵法が、破壊せず荒らさず戦うのが最高だというその「国土」を、子どもの居場所や存在、人格になぞらえてみましょう。「国土を破壊する」とは、子どもを否定する、無視する、体罰を与える行為だといえます。当然ですが、子どもに否定的な言葉を浴びせる、けなす、人間性を攻撃して子どもの居場所をなくすような子育ては、絶対によくありません。子どもを叩いたり暗い所に閉じ込めたりする体罰も、国土=子どもを破壊する行為であるといっていいでしょう。
虐待などもってのほかで、それも国土破壊行為であることはいうまでもありません。つまり、子育てにも「謀攻」が重要であることがわかります。