八角信芳理事長にズバリ聞く「協会」「白鵬」「貴乃花」
芝生のある家を建てるのが入門時の目標だった
――新体制がスタートしましたが、協会をこうしていきたいというビジョンを聞かせてください。
「当然、いい協会にしていかなければなりません。力士にしても親方衆にしても、やり甲斐のある相撲協会にしていかなければならないと思っています。いい相撲を見せるのもそうだけれども、いい生活というか、給料なども上げていかなければ。子供たちの夢を実現させる世界でもあるわけですから。わたしがこの世界に入ったのは、芝生のある家を建てるというのが目標でしたので。そういう意味で、お相撲さんになったら、たくさんお金をもらえるとか、さまざまな夢をかなえる場所でなければ、次の世代は育ってこないように思うのです。そのためにも無駄遣いをなくして、その分、力士や親方衆に還元する。おかげさまで昨年一年間は黒字が出ましたけれども、もっともっと黒字を出していかなければならないと思いますね。国技館の改修などで、なかなか還元はできませんけれど、いろいろな意味で安定した財源を確保していかなければならない。それにはまず、無駄遣いをなくす。わたしの見る限りではまだ、あると思いますので」
――例えば工事をやったがために、新たに余計な工事が必要になったなどというのは、その過程で意図的な無駄遣いがあったのではないですか?
「建設委員会でやっていたはずなんですけれども、その辺が機能していなかった気がしますので、もう一度、見直していきたいと考えています。今、尾車(事業)部長(59=元大関琴風)がやってくれています」
――新たな職務分担で心掛けたことはありますか。
「各部署との連携をスムーズにするために、これまで置かなかった親方衆も本部に置くようにしました。具体的には各地方場所の担当の親方、審判部の副部長、巡業部の副部長を本部に置いています。巡業部副部長の芝田山さん(53=元横綱大乃国)には広報部副部長も兼務してもらうようにしました。今まで地方場所は地方場所という部分が多かった。地方場所のことは地方場所の部長に任せておけばよいという部分がありましたけど、より連携を深めていきたい。例えば、地方場所が考えていることがあっても、本部に聞いてみないと分からない。時間がかかった。しかし、すでに親方が本部にいれば、すぐに聞いて動けますよね。集客にしても、時間との戦いの部分があると思いますから」
――より多くの親方を本部に置く狙いはそれだけですか。
「親方衆が中に入ることで、協会の運営の仕方を覚えてほしいのです。より多くの親方が勉強して、他の親方衆にも広めていくといいますか。親方衆はこれまで稽古さえ見ていればいい、事務的なことは事務所に任せておけばいいという雰囲気があったと思うんですけど、自分たちがやるんだと。100人の親方衆が自分たちでスカウトをし、弟子も育てて、協会の運営を理解し、携わっていけば、より万全で、強い相撲協会になると思います」
■裏金顧問への損害賠償請求は?
――巡業部長になった貴乃花親方と理事長選で貴乃花親方に投票した計3人が執行部から外れたのは、改革に障害になるからでしょうか。
「いやいやいや。執行部から外れてるとか、よく言われますけど、そうではありません。適材適所といいますかね。そう思ってやっています。貴乃花部長は土俵の充実を掲げていますし、巡業先の稽古というのは力士にとって、最も大切な部分です。しかも、元横綱ですので、横綱、大関を指導できる。稽古もそうですし、横綱としてどうあるべきかも指導できますから」
――改革に邪魔だとか、抵抗勢力になると判断しての人事ではないのですか。
「いや、それは全然(苦笑い)。あくまで適材適所です」
――裏金顧問は解雇後も理事長選に向けて外からあれこれ画策していましたけど、今後も執行部の足を引っ張る心配はありませんか。
「そのようなことが事実かどうか、わたしには分かりかねます。が、前顧問の対応につきましては今、弁護士と話し合っていますので、ここでコメントすることは控えさせてください。ただ、協会として調べるような事案が出てくれば、きっちりしなければならないと思っています」
――経理上でおかしな事案が出てきた場合、協会として損害賠償を請求することはお考えですか。
「もちろん、調査の上、理事会に諮って、いろいろやっていきたいと思います」
(聞き手=本紙・崎尾浩史)
▽はっかく・のぶよし 1963年、北海道生まれ。第61代横綱・北勝海。初土俵は79年。87年に横綱昇進。幕内優勝8回。92年に引退。翌93年、九重部屋から独立、八角部屋を立ち上げた。2012年から相撲協会理事。広報部長などを務め、15年12月から現職。