ワリエワに続きスペインペアからも違反者…フィギュア界を揺るがす「薬物とジャンプ」

公開日: 更新日:

 フィギュアは他競技に比べて圧倒的にドーピングが少ない──。

 昨年12月に世界反ドーピング機構が公表したデータによれば、2019年の1年間でフィギュアスケートの違反件数はわずかに1件。長く“優良競技”として認識されてきたからこそ、検査数も少なかった。が、事情が変わってきた。北京冬季五輪でペア11位だったスペインの女子選手、ラウラ・バルケロ(20)の検体から禁止薬物の陽性判定が出たことが発覚。五輪期間中には、ワリエワ(15、ROC=ロシア・オリンピック委員会)のドーピング違反が大騒動になったばかりだった。

【写真】この記事の関連写真を見る(23枚)

 相次ぐフィギュア界の禁止薬物違反。しかも、バルケロから検出されたのは筋肉増強作用のある成分だった。ペアの場合、女子選手をリフトで持ち上げたり、スロージャンプで投げたりする男子選手には筋力が求められるが、女子の場合はそこまで必要なのか。フィギュア選手は体重が軽ければ軽いほど高いジャンプを跳ぶのに有利とされ、つける筋肉は必要最低限。むしろ厳しい食事制限や減量で苦しむ選手が後を絶たない。

年齢引き上げは新たな火種

 本来、薬の力を使わなければいけないほどの筋力増強と競技の特性は相反する。しかし、その構図を崩したのが近年の「ジャンプ至上主義」だ。

「平昌五輪後、ジャッジの見直しによって基礎点を下げ出来栄え点を上げる採点方式に変わった。それ以降、『技の難易度より完成度』といわれてきたものの、ロシアの女子選手たちはみな完成度の高い4回転ジャンプを次々に決めて表彰台を独占する。結局、4回転は避けて通れない技のひとつであることには変わりはない。北京では4回転も3回転半もない坂本花織選手が高い完成度で銅メダルを獲得し、『4回転時代に勝った』と称賛された。確かにノーミスだったことは評価すべきだが、ワリエワ選手がミスを連発しなければメダルには届かなかったでしょう」(フィギュアスケート関係者)

 フィギュアは単純に速さや高さを競うものとは一線を画し、「演技」を「競技」として採点評価する特殊性がある。それがジャンプ技術の向上で「競技」により近づいた結果、ドーピング違反の増加を助長させているとすれば、本末転倒だ。

「現在、議論されている年齢制限の引き上げも根本的な解決にはならないと思う。17歳からの参加が検討されているが、その年齢は女子選手の場合、特に体つきや体質の変化が起きやすい時期。女性ホルモンをコントロールしたり成長を遅らせる薬を使用する国が出てくるかもしれない。単に年齢を引き上げるだけでは、むしろ逆効果かもしれません」(前出の関係者)

 また新たな火種を抱えることになりそうだ。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

  2. 2
    鈴木誠也と吉田正尚が窮地…トレード浮上も引き取り手なし、大谷フィーバーの裏で価値大暴落

    鈴木誠也と吉田正尚が窮地…トレード浮上も引き取り手なし、大谷フィーバーの裏で価値大暴落

  3. 3
    悠仁さま「オックスフォード大進学」再浮上のナゼ…昆虫標本が充実した自然史博物館の存在

    悠仁さま「オックスフォード大進学」再浮上のナゼ…昆虫標本が充実した自然史博物館の存在

  4. 4
    なぜ大谷はチャンスに滅法弱くなったのか? 本人は力み否定も、得点圏での「悪癖」とは

    なぜ大谷はチャンスに滅法弱くなったのか? 本人は力み否定も、得点圏での「悪癖」とは

  5. 5
    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  1. 6
    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

  2. 7
    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

  3. 8
    大谷への「アジア人差別感情」は球宴ファン投票にも表れ…問題の根は深く心配な今後

    大谷への「アジア人差別感情」は球宴ファン投票にも表れ…問題の根は深く心配な今後

  4. 9
    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

  5. 10
    ロッテ佐々木朗希は“身内”からも嫌われた? 故障中とはいえ選手間投票でも球宴選外のトホホ

    ロッテ佐々木朗希は“身内”からも嫌われた? 故障中とはいえ選手間投票でも球宴選外のトホホ