「小山ちれ事件」と「智和」の名前に込められた親心
アマチュア選手にとって、日本は天国だ。
実業団に所属すれば、練習時間、練習場所、報酬、宿舎、将来の保証とアスリートファーストで整えられ、競技に集中できる。張本智和の父・宇さん(47)を含め中国の卓球OBが日本で指導に当たるのは、この環境に引き寄せられてのこと。宮城県の卓球関係者はこう話す。
「当時、日本の給料がよかったからね。ここで生活して、実家にも仕送りが出来た。やがて宇さんのように帰化して、卓球場を開設した中国人は、いまでは愛知、大阪、全国の6、7カ所にいる。その子供たちが力をつけて大会の上位にいますよ。張本君だけじゃなくね」
しかし、日中関係は複雑だ。
中国の関係者に忘れられないのが、アジア大会での小山ちれの優勝という“事件”だ。中国代表として世界選手権などで活躍した小山が日本人コーチと国際結婚し、日本国籍を取得。1994年の広島アジア大会には日の丸をつけて、決勝で中国のエース鄧亜萍に逆転で金メダルを獲得した――中国で大問題になった。