「少年H」水谷豊演じる主人公の父が子に諭す戦争の愚かさ
2013年 降旗康男監督
先日亡くなった降旗康男監督(享年84)の代表作のひとつ。戦中・戦後の世相を描いた。
1941年、神戸に住む小学生のH(吉岡竜輝)は仕立屋の父・盛夫(水谷豊)と家族4人で暮らしている。世間は戦争色が濃くなり、逮捕者や自殺者が続出。盛夫も特高警察に連行される。
中学に上がると、学校は軍人が支配する世界で、「天皇陛下のおんために命を捧げよ」と叩き込まれる。爆弾を背負って敵の戦車に突進する訓練を受け、教官に意見すれば鉄拳制裁だ。やがて戦況が悪化し、爆撃で街を焼かれるのだった……。
盛夫は他人を責めず正直に生きるクリスチャン。逃げてきたユダヤ人の洋服をこっそり修理してやる。だが息子が米国の絵はがきを持っているだけでスパイ容疑で特高の拷問を受ける。
子供は天皇の写真と教育勅語を納めた奉安殿に敬礼しなければならない。クリスチャンは徴兵されて危険な最前線に送られる。Hがなついていたうどん屋の兄ちゃん(小栗旬)は共産主義運動で逮捕。元役者(早乙女太一)は召集されて自殺する。彼の暗い顔が出征兵士の心情を表している。