ガイドライン変遷と「がん治療」
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乳がん<10>ステージⅣの生存率大幅アップを可能にした薬物療法
「ステージⅣ=末期がん」というのは間違いです。とくに乳がんでは、ステージⅣでも年単位で生きられるひとが大勢います。国立がん研究センターが昨年公開したデータによれば、ステージⅣの乳がん患者の5年生存率は…
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乳がん<9>「再手術」の記述の変化と「ステージⅣ」の治療
「手術」と「薬物療法」の甲斐もなく、乳がんが「再発」することがあります。部分切除の患者では、乳房の残った組織に、全切除の患者は胸壁(肺より外側の、いわゆるリブの部分)に再発します。あるいは腋窩や鎖骨上…
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乳がん<8>術後薬物療法 期間は「5年」から「10年」推奨に
乳がん患者の大半は、数カ月間の術前薬物療法を経て、ようやく手術にこぎつけます。しかし部分切除を受けた患者と、全切除で腋窩リンパ節郭清も必要だった患者には、さらに3~5週間にわたる放射線治療が待ってい…
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乳がん<7>髪が抜けることはない手術後の「放射線治療」
手術が終わると、多くの患者に対して放射線治療が行われます。初版のガイドライン(2005年)は、まだ術後放射線治療のエビデンスがそろっていなかったこともあって、ややまとまりを欠いた記述になっていました…
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乳がん<6>「腋窩リンパ節郭清」の扱いが15年前と違ってきた
乳がんは原発巣から最寄りのリンパ節(センチネルリンパ節)へ、さらに腋窩リンパ節(脇の下のリンパ節)へと転移を広げていきます。 術前の所見で、リンパ節転移がないと診断された患者に対しては、手術…
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乳がん<5>「部分切除」より「全摘」を選ぶ患者が増えたワケ
数カ月に及ぶ薬物治療が終了すると、いよいよ手術です。手術の方法は20世紀にほぼ確立されているので、診療ガイドラインの初版(手術に関しては2005年)から現在に至るまで、大きな変化はありません。進行度…
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乳がん<4>「強く推奨」となったハーセプチンによる術前薬物療法
HAR2は細胞の分裂と増殖に関わるタンパク質の一種で、正常な細胞にもあります。ところが乳がん細胞のなかには、それを異常に多く持っているものがあるのです。それが「HAR2陽性」の乳がん、全患者の10%…
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乳がん<3>「術前補助薬物療法」は抗がん剤の組合せで3~6カ月間
乳がんと診断されても、いきなり手術になることは、ほとんどありません。まずは「術前補助薬物療法」が始まります。薬で腫瘍を小さくできれば、再発リスクが下がるからです。また全切除が必要とされていた患者でも…
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乳がん<2>ステージ区分と重視されつつある5つのサブタイプ
進行度(ステージ)は、治療方針を決めるうえで重要です。「腫瘍の大きさ」最大径)、「リンパ節転移の有無」「他臓器への転移の有無」決まります。 最大径が2センチ以下で、かつリンパ節転移がければ「…
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乳がん<1>治療の主役は薬物療法 手術編より100ページも多い
家族が集まる年末・年始は日頃はおろそかになりがちな身内の健康について考えるいい機会だ。 とくに気にしたいのは乳がんだ。女性がかかるがん第一位で、45歳女性の罹患率は30年前の5倍に急増してい…
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大腸がん<8>治療の進歩で5年生存率はどれだけ改善されたか
大腸がんの治療の進歩によって「5年生存率」は、どのくらい改善されたのでしょうか。 分かっているのは①2000~04年症例(この間に大腸がんと診断された患者)と②09~10年症例の数字です。そ…
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大腸がん<7>薬物療法の延命効果「生存期間中央値」は?
3次治療には、1次・2次治療で使われなかった抗がん剤や分子標的薬が推奨されています。 1次・2次治療は主に点滴ですが、こちらは主に錠剤タイプなので、通院が少しラクになるはずです。副作用も比較…
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大腸がん<6>1次治療の病勢コントロール率は70%
最新の治療ガイドラインには、切除不能進行再発大腸がんに使える薬として十数種類が連なっています。そのうち6種類は分子標的薬、ひとつが免疫チェックポイント阻害剤です。 1次治療だけでも13通りの…
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大腸がん<5>切除不能進行再発の抗がん剤治療は5段構え
ステージⅢ以下で、手術と術後補助化学療法などを行ったにもかかわらず、再発してしまうことがあります。ちなみに用語に関して、最初から大腸以外の臓器にも腫瘍が認められる場合は「転移(肝転移、肺転移など)」…
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大腸がん<4>Ⅳ期の手術 転移巣は後に切除するのが鉄則
世間ではよく「がんの手術はステージⅢまででステージⅣ(他臓器に遠隔転移している)は手術の対象外」といわれています。しかし大腸がんでは必ずしもそうではありません。 治療ガイドラインによれば、原…
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大腸がん<3>術後補助化学療法 使える抗がん剤が6種類に増
今世紀に入ってから、大腸がんに使える抗がん剤が増えました。それに伴って抗がん剤の標準治療も変わりつつあります。まずは術後の補助化学療法についてみていきましょう。対象は主にステージⅢの、比較的体力があ…
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大腸がん<2>放射線治療 寿命延ばす効果は期待できそうもない
大腸がんでは、ステージⅡ以上の直腸がんに補助放射線療法を行うことがあります。結腸がんの多くは腺がんで、放射線はあまり効きませんが、直腸では扁平上皮がんが多く、放射線が効果を発揮しやすいのです。 …
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大腸がん<1>0期内視鏡は2cm未満対象から「大きさ不問」へ
「大腸癌治療ガイドライン」(大腸癌研究会編纂)の初版が出たのは2005年のこと。最新のものは19年版(第6版)です。 大腸がん治療の中心は手術ですが、進行度(ステージ)と手術適応の関係が重要で…
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胃がん<7>抗がん剤治療 体力が続けば「3段階」まで可能
ステージⅣと再発性の胃がんに対する化学療法の1次治療は、HER2陽性か陰性かで分かれます。陽性ならカペシタビン(またはS―1)+シスプラチン+トラスツズマブの併用療法です。前の2つは従来からの抗がん…
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胃がん<6>「根治を目指さない」化学療法4つの特徴
2015年からは、新たにオキサリプラチン(点滴)が胃がんの「術後化学療法」に使えるようになりました。またS―1とオキサリプラチン、オキサリプラチンとカペシタビン(錠剤)の併用など既存の抗がん剤の組み…