乳がん<8>術後薬物療法 期間は「5年」から「10年」推奨に
乳がん患者の大半は、数カ月間の術前薬物療法を経て、ようやく手術にこぎつけます。しかし部分切除を受けた患者と、全切除で腋窩リンパ節郭清も必要だった患者には、さらに3~5週間にわたる放射線治療が待っています。それだけでは済みません。放射線の有無に関わらず、全員に「術後薬物療法」が行われるのです。
再発リスクが高いと判定された患者には、抗がん剤が使われます(期間は3カ月から6カ月)。腫瘍サイズやリンパ節転移の程度、Ki69(乳癌の増殖速度に関する指標)、年齢などによって、リスクが評価されます。またHAR2陽性患者には、ハーセプチンなど分子標的薬も併用されます。
抗がん剤の有無に関わらず、ホルモン受容体陽性の患者全員に対して、ホルモン療法が強く推奨されています。使われる薬は術前のときと同じ、閉経前ならタモキシフェン、閉経後ならアロマターゼ阻害薬が第一選択となります。
しかし問題はその期間です。
ガイドライン初版(2004年)では「術後5年間」とされていました。ところが最新版(2018年版および追補2019)には、浸潤性乳がん(ステージⅡの一部とステージⅢ)に対しては、タモキシフェンを5年投与したのち、さらに5年間追加(計10年間)することを「強く推奨」しています。あるいは最初の5年間のうちに閉経した場合は次の5年間はアロマターゼ阻害薬、最初から閉経している患者は最初からアロマターゼ阻害薬を合計10年間となっています。