父鶴瓶にダメ出しされ 駿河太郎を変えた鈴木おさむの演出
でも、それが理解できなくて。「何なんやろ」と思ったまま、翌日、劇場でおさむさんに「何て言ってた?」って聞かれたので、「よく分からないんですけど、メチャメチャ、ダメ出しされました」と話したんです。
■ふとしたセリフがターニングポイントに
そうしたらその日の舞台で、僕と山崎樹範さんと施鐘泰さんが演じるアドリブシーンのとき、山崎さんが前日までなかったセリフを何の予告もなく僕に振ってきた。振られた以上、僕はアドリブで返さなければならないんですが、ない知恵絞って言ったセリフがダダ滑りしたんです。
本来、そこは笑いを取るシーンなのに、満員御礼700人ほどの観客が誰一人として、クスリとも笑ってくれなくて。どんなセリフを振られて返したか、スッポリ記憶がないんですが、本当に恥ずかしかった。
フラフラになりながら、「もう、ここで俺を殺してくれ」と言って、舞台の隅のベンチに崩れ落ちるって芝居をしたんです。
恥ずかしいやらつらいやらで、その時は本当に殺してほしいと思ったから、口走った自分の本音。舞台上で人生に一度あるかないかの大恥をかいて、生身の僕自身をさらけ出した瞬間ですね。すると不思議なもので、パーンとお客さんが笑ってくれた。それ以降は、ちゃんと僕のセリフを聞いて、リアクションしてくれるようになったんです。