母離れより影響大 宮沢りえの飛躍に坂東玉三郎の“父性”
■希有な女形の父性に育てられた
「マネジャーだった母親と別れて、ロスで自分を見つめ直したことが転機」と前述の川内氏が指摘するが、その前に大きな影響を及ぼした坂東玉三郎を忘れてはならない。
歌舞伎役者の女形で演出も手掛け、世界的なアーティストと誉れ高い玉三郎は94年、舞台「天守物語」、翌年、同作品映画で宮沢と共演した。樹木希林や鳳蘭などの大女優が推した宮沢に、玉三郎も一目でアーティスト性を見いだした。
「ああ、ずっとこの人のそばにいれたらいいな。そばにいられたら、自分は何か高いものを見られるんじゃないかと思ったんです」という宮沢に、「彼女がこれからどうなっていくかということが、僕にとってはもっと貴重なんです。やっぱり彼女にはちゃんとした女優さんになってもらいたいし」と答える玉三郎(週刊プレイボーイ95年10月3日号)。アーティスト同士の強い信頼関係が、確かに存在した。
希有な女形の“父性”によって育てられたおかげで、大輪の花を咲かせる素地が出来上がった。実に幸運な女優である。