おおたわ史絵さんに聞く 刑務所で受刑者の診療をする理由

公開日: 更新日:

 この頃の私は終わりの見えない戦いに完全にまいっていましたね。母の問題と正面から向き合う意欲も情熱も、すっかり消えてしまっていました。半ば無視、放置するように見て見ぬふりを通していたある日、母は自室で独りで病死しました。5年前の秋、第一発見者は私でした。反射的に心臓マッサージをしたのを覚えています。あんなに嫌な思い出しかなかったはずの母親なのに、不思議なものですね。今でも脳裏をよぎる記憶の中の母は薬物で人格を破壊され、酷い出来事ばかりです。

 でも、それもすべては依存症のせいだったのでしょう。依存さえなければ、まったく違う幸せな人生が送れたかもしれない……。

 そんな折、法務省から矯正医療のお話をいただきました。薬物や盗み、暴力などの依存の医療に携わる場所は、私にとって別世界と思えませんでした。依存症は刑罰や拘束で解決するものではありません。法と医で力を合わせて取り組むべき問題です。そしてそれこそが、再犯防止へのたった一つの道だと考えています。

 誰もが「再犯を止めるのはまず不可能だよ」と言います。おっしゃる通り。でも、100人だめでも、もしかしたら101人目には何か伝わるかもしれない。一人くらいは変わるかもしれないじゃないですか。それを目指して腰を据えてやっていくつもりです。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  4. 4

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  5. 5

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  1. 6

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  2. 7

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  3. 8

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  4. 9

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  5. 10

    今田美桜「あんぱん」に潜む危険な兆候…「花咲舞が黙ってない」の苦い教訓は生かされるか?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が